4-9.どっちつかずの覚悟 ページ9
「これじゃあ、試合では使えないわね……」
そう言ったきり、如月さんは考え込んでしまった。
私もただ立ち尽くす。
如月さんの指導のもとで、私のシュートは幾分か上達したように思う。だが必殺技となると、これがもう、てんでできない。
まず蹴り上げる時の力加減がわからず、シュートを打つ位置が一定ではない。
その上ボールの高さまで飛び上がるほどのジャンプ力がない。しかし『すいせいシュート』を打つにはそれなりの高さが必要なのだと如月さんは言った。
少し気を抜くと、やっぱり自分にはできないのだろうか、という考えで頭がいっぱいになってしまう。ともすると、すべてを投げ出してしまいたいと思うこともあった。
逃げ出したくなる衝動を抑えながら、私はボールを蹴っていた。
.
「安定してきたな」
「ほ、本当ですか……?」
「ああ」
如月さんとの練習の成果が出ているのだろう。部活の方では、倉間先輩にノーマルシュートの精度が上がってきていると言ってもらえるようになった。
「次の試合、やれそうか?」
いつになく真剣な顔で倉間先輩に尋ねられ、言葉に詰まる。頷けるほどの自信はない。
「……やるしかないと、思ってます」
問いからわずかにずれた私の返答に、倉間先輩は目を伏せて「そうか」と呟いた。
練習を続けていると、大きな引き戸を開けるような重い音が、かすかに聞こえた。サッカー棟の部屋の扉は自動ドアか開き戸だ。
何事かと思って耳をすますと、また同じような音が聞こえた後に、ざあっと天井を水の粒が叩く。
「雨……?」
音無先生がスタジアムにやってきて、これから雨が酷くなるため、今日の練習はここで切り上げて下校するよう私たちに促した。
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます! 助かります……! (2021年2月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます! 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります!! (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます!剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです! (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春真 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2020年8月26日 12時