4-21.諦観 ページ21
「白恋のキックオフで後半開始です!」
ホイッスルが鳴った次の瞬間には、あっという間に白恋の選手が真横を通り過ぎていく。私と倉間先輩は、後から攻め上がってくる選手のマークについた。
「アインザッツ!」
神童先輩が、近くにいた白恋の選手にボールが渡った瞬間にブロック技をしかけボールを奪う。
パスを受けた天馬くんがドリブルで攻め上がるのを確認して、私は敵陣に上がった。
前半で必殺シュートを打った倉間先輩は私より警戒されていて、パスが出しづらい。よってゴールが近づいてくると、自ずと私にボールが回りやすくなる。
「A!」
「はい!」
錦先輩からパスを受け取る。
「A、打て!」
マークにつかれている倉間先輩が叫んだ。
前半ではシュートを打とうとしてボールを奪われてしまった。一度白恋が攻撃に転じれば、その勢いを覆すことは難しい。
それに、私は私のミスを自分で取り返すほどの実力もないのだ。
シュートを打とうかどうか迷っているうちに、白恋のDFが迫ってきていた。
慌ててボールを蹴り上げ、自分も右足で踏み込む。
ボールには届きそうだったが、白恋の選手がすかさず空中でチャージを仕掛けてきた。
「う、っ……!」
バランスを崩して受け身がとれなかった。落下した私の周りで砂埃が舞う。
「A!」
「大丈夫です!」
神童先輩のものであろう声にそう返しながらも、私はすぐに立ち上がることができなかった。
口の中で砂利を噛む。
こめかみから流れた汗が地面に落ちて、砂の色を濃くした。
ミサンガが汗で手首に張り付いているのが目に入った。
悔しい。
シュートを打って止められたならまだしも、打ててすらいない。
少し前の私なら、全国大会に出られただけで満足していただろう。でも今は違った。
雷門中のホーリーロードをここで終わらせたくない。
「雷門、剣城の欠場の影響でしょうか!? 攻めきれない場面が続いています!」
今からでも輝くんと交代すれば、まだ希望がある。
そう思ってベンチの方に目をやった時、葵ちゃんが両手を口に添えて叫んだ。
「Aちゃん、諦めちゃだめ!」
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春間(プロフ) - 桜星。さん» コメントありがとうございます! 助かります……! (2021年2月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
桜星。 - 4-3「怯え」の三行目、天馬のセリフが「次の試合こと」になっていますが、恐らく「次の試合のこと」ではないでしょうか。 (2021年2月25日 13時) (レス) id: 15148237ac (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - なすびさん» ありがとうございます! 楽しみにしてくださってとても嬉しいです。頑張ります!! (2020年8月26日 18時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
なすび(プロフ) - 続編おめでとうございます!剣城くん抜きで試合がどうなるか楽しみです! (2020年8月26日 16時) (レス) id: c22c2e84dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春真 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2020年8月26日 12時