10-39.続いていく日々 ページ39
眠い目を擦りながら教室に行くと、信助くんと狩屋くん、輝くんが教室に来ていた。だが、その様子がどこか変だ。
サッカー部の面々が顔を突き合わせ、何やらこそこそと話し合っている。内緒話、では済まないようなシリアスな雰囲気が漂っていて、声がかけづらい。
だが、挨拶をしないのもおかしな話かと思い、「おはよう」と声をかけてみた。
「わっ!?」
みんなの肩が大袈裟に跳ねる。輝くんはこちらにサッと笑顔を向けて「おはようございます!」と言ったが、顔が引きつっていた。
「あの、みんな……何、話してたの……?」
「エッ」
輝くんと狩屋くんの表情がわかりやすく固まる。
葵ちゃんと剣城くんは意味深に目配せしているし、信助くんは俯いている天馬くんの様子を伺っている。
「A……」
天馬くんがぽつりと呟いた。だが俯いていてその表情はわからない。
次の言葉を待っていると、天馬くんが少しだけ顔を上げた。
彼はなぜか、とても悲しそうな顔をしていた。机の上に視線を彷徨わせたあと、天馬くんはおそるおそると言った様子で私を見上げた。
「天馬くん、どうしたの……?」
「……A、実幡に帰っちゃうって本当?」
「えっ!?」
天馬くんが今にも泣き出しそうな声で言うものだから、胸がきゅっと締め付けられた。
いいやそれよりも、私が実幡に帰るとはどういうことだろう。まったく話が見えない。
比較的落ち着いている葵ちゃんと剣城くんに目を向けると、剣城くんは観念したかのように目を伏せ、葵ちゃんは「あのね……」と言いづらそうに話し始めた。
「狩屋くんが聞いたんだって、昨日……Aちゃんが実幡のキャプテンと話してる時に……実幡に戻るって……」
「俺、Aの決めたことなら応援したいけど、でも、いなくなるなんて思ってなくて……」
私は思わず頭を抱えた。まさか聞かれていたとは。いいや、聞かれていたにしてもとんだ勘違いである。
「あの、全然、違うから……勘違いだよ」
天馬くんがうるうるした瞳でこちらを見つめてくる。
「本当? 雷門にいる?」
「いるいる! 私、来年も戦おうって実幡のキャプテンと約束したんだよ!」
そう返すと、天馬くんをはじめ、みんながほっと安心した表情を見せた。
「良かった〜!」
「やっぱり狩屋の勘違いじゃん!」
「仕方ないだろ! 俺だって慌てたんだぜ!?」
みんなの声が飛び交う。
きっと明日もそうなのだろう。明後日も、そのずっと先も。
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春間(プロフ) - 匿名2号さん» コメントありがとうございます! 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします! (2022年3月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名2号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます! 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました!この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…! (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます! お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2021年3月14日 19時