10-32.覆す方法 ページ32
「A!」
天馬くんからのパスを受け取る。
正面からは実幡の選手が向かってきていた。迷っている暇などない。
「招雷の青龍!」
祈るように叫ぶと、青龍は地面をえぐるようにして姿を現した。自分が化身を出すなんて、まだ信じられない。しかし、青龍と私の呼吸がぴったり重なっていたことは真実だった。
「__テンペスト」
最初から知っているかのように、言葉は口をついて出てくる。
青龍が上体を振って高く鳴き声を上げると、空から何本もの雷が降ってきて相手選手を襲った。
「何っ!」
「うわぁっ!」
二人の相手選手を抜き去り、剣城くんへパスを出す。
「剣城くん! あの、最初の技、打って!」
そう叫ぶと、剣城くんは一瞬戸惑った表情を見せたが、次の瞬間には何かを決心したような顔つきに変わっていた。
剣城くんが、背中の黒い翼を違って高く飛び上がる。勢いをつけてシュートを打った。
「デビルバースト!!」
それを見た実幡の選手が、「その技は入んねえよ!」と愉快そうに、だが苛立ちを隠せない表情で言った。
私はほとんど反射的に口を開いていた。
「__絶対入るよ!」
だって、ゴール前に輝くん、天馬くん、狩屋くんが走り込んでいる。走るスピードを調整しながら、輝くんが指笛を吹く。すると地中から五匹のペンギンが顔を出した。
「皇帝ペンギン!」
輝くんがデビルバーストに重ねて蹴りを入れる。威力の増したボールの周りをペンギンたちが囲んだ。
「二号!」
そのシュートを、天馬くんと狩屋くんが同時にさらに蹴った。すさまじいスピードと威力。実幡ゴールに真っ直ぐ向かっている。
「賢王キングバーン!」
相手キーパーの声と共に、真っ黒な王が姿を現した。キングバーンは両手に纏った炎でシュートを止めようとしている。
「くそ、くそっ……どうして……!」
悔しげな声が聞こえたが最後、シュートはキングバーンを吹き飛ばして実幡のゴールネットに突き刺さった。
「ゴーーーーーール!! 雷門のシュートチェインにより得点は4対4! 後半ここにきて同点です!!!」
観客席から熱狂的な声が止まない。
得点板を見ると、思わず口角が上がった。ついに同点まで追いついたのだ。
「A」
振り向くと、少し呆然とした様子の剣城くんがいた。
「ナイスシュート!」
私が右手を上げると、彼の表情が晴れやかなものに変わって、それに応えてくれた。
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春間(プロフ) - 匿名2号さん» コメントありがとうございます! 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします! (2022年3月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名2号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます! 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました!この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…! (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます! お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2021年3月14日 19時