10-28.サッカープレイヤーたち ページ28
思わずそう叫ぶと、相手選手が喉の奥をくつくつと鳴らして笑った。
「“どうして”……?」
彼はからかうように、歌うように、私の言葉を繰り返す。
「勝つためだよ」
「勝つために、こんなことしなくても……!」
思わず言い返すと、彼は大きな大きなため息をついた。苛立っていることをわからせるために、わざとしているのがわかった。
「わかんないだろうなぁ。雷門に入ったお前には」
「そ、れは、どういう__」
「負けたことないお前にはわかんないだろうなって言ってんだよ!!」
突然怒鳴られて、身体が硬直する。思い出す。実幡にいた時のことを。
「いいよな、お前は。雷門の奴らについて行けば、お前は何もしなくても勝てるんだから」
悔しいけれど、彼の言う通りだった。雷門は一度も試合で負けていない。私は選手として、“負け”を知らない。
「牙山さんには色々指導してもらった。俺たちを強くしてくれた。__恩があるんだ。
ここで雷門を潰して、世話になったあの人の計画の手助けをしたいと思うのは、そんなにおかしなことか?」
そう話す彼は必死な表情をしていて、冷静さを欠いているように思えた。
「同じ選手ならわかるだろ!? 勝ちたいって気持ちが! そのためなら何でもしたいって気持ちが!」
「__わかんないよ!」
ほとんど反射で叫んでいた。フィールドにいる選手の、その全員の目が私に向いた。
「勝つ、ためだったら、っこんなふうに、サッカーで、誰かを傷つけてもいいの……?」
息が上がって、涙が溢れてきて、言葉が見つからなくて、上手く喋ることができない。それでも何も言わずにはいられなかった。
「全然わかんないよ、勝ちたいけど、みんな、勝ちたいって、思ってるけど、でも、こんなの……サッカーじゃない、サッカーじゃないよ……」
天馬くんが心配そうな顔で駆け寄ってきた。先程まで倒れていたのに、いつの間に動けるようになっていたのだろう。
「A……」
「許せない……こんなの許せないよ……!
みんな、サッカーが大好きなのに……!」
それが、一番悔しい。
部員が増えなくても、練習する場所がなくても、なかなか結果が出なくても、それでも実幡のみんなは毎日ボールを蹴って、蹴って、蹴り続けていた。
世界を支配する計画に手を貸すような、そんなチームじゃなかった。
牙山は、自身の計画のために実幡を利用したのだ。
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春間(プロフ) - 匿名2号さん» コメントありがとうございます! 面白いと言っていただけでとても嬉しいです。別作もよろしくお願いいたします! (2022年3月25日 14時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名2号(プロフ) - 面白くて時間を忘れて読んでました。必殺技の描写や試合運びなどわかりやすく表現されていてすごく参考になりました。ツインブースト打つくだりの話が特に好きです。素晴らしい作品をありがとうございました。アンソロの方も読みましたので別作も読んできます。 (2022年3月25日 8時) (レス) @page41 id: a481d4b51d (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - むすぶさん» コメントありがとうございます! 楽しんでいただけて何よりです。嬉しいお言葉、励みになります! (2021年8月31日 10時) (レス) id: 65d4199637 (このIDを非表示/違反報告)
むすぶ(プロフ) - はじめまして。とてもとてもとても面白くて、最初から一気読みしました!この小説に出会えて本当に良かったです。続編のご予定は無いとのことですが、夢主ちゃんとサッカー部や剣城とのその後が読んでみたかったです…春間さんの小説をこれからも楽しみにしています…! (2021年8月25日 19時) (レス) id: c2d0a2f182 (このIDを非表示/違反報告)
春間(プロフ) - mayaさん» コメントありがとうございます! お褒めいただき光栄です。今後を読んでみたいというお言葉、とても嬉しいのですが、続編の予定はございません。申し訳ありません;; (2021年7月4日 16時) (レス) id: 71c8355ca9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春間 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/april_hrm
作成日時:2021年3月14日 19時