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第1話 ページ1

20XX年XX月XX日、某企業はイナイレの新作ゲームを発売し、界隈に衝撃を与えた。タイトルは「イナズマイレブン 転生姫と4人の王子」と名付けられ、その発表は大きな反響を生み、初週売上は計5万本に達した。


ハードとフルダイブVR、そしてソフトの3点セットを用意さえすれば、後は遊ぶだけだ。家電量販店でそれらを購入し、片手に大きな紙袋を持ちながら店を出た。生憎空模様は雨で、もう片方の手で傘の柄を持たなくてはならなかった。


「ハードとフルダイブVRセットで13万円、ソフトが8000円…。いや、安い方安い方」


月収の半分を使ってしまった。しかし、後悔は微塵もない。このゲームを買うために、数ヶ月前から一生懸命に仕事に励んできたのだ。ようやく悲願が叶ったのである。ワクワクとした胸の高鳴りを抑えながら家の玄関の前に立ち、傘を閉じると片手で鞄の中から鍵をなんとか取り出し、ようやく家の中に入る。雨に濡れたからか、靴下はびしょびしょだ。右肩も酷く濡れていて、その部分の服を絞ったら水が出て来そうだ。


自室の床で正座をしながら購入したものを開封し、プレイ直前に改めてゲームソフトのパッケージを眺めた。パッケージ表紙の中央にはプレイヤーが操作すると思われる女主人公がドレスを着ていて、その周りを4人の王子が囲んでいる。そして、その4人の王子とは基山、吹雪、神童、野坂。まさに王子と呼ぶに相応しい選抜キャラクターである。


イナズマイレブンで乙女ゲームが出たなんて、今でも信じられない。そもそもイナイレのゲーム自体がもう出ないのではないかと巷では言われていたのに、予想の斜め上をいかれた。やはり某企業はいつも超次元の発想を繰り出す。そこが好きなんだが。



「Twitterで話題になってたけど、ゲームはフルボイスなんでしょ。豪華すぎる!あ〜ぁ、楽しみ。_あ、『コンソメ次郎』さんツイートしてる」


左手でゲームソフトをセットし、右手でスマホを持ちTwitterを開く。タイムラインでは相互さんの『コンソメ次郎』さんのツイートが流れて来て、私はそれを眺めた。コンソメ次郎さんとはTwitterを通してつい最近知り合い、よく交流している。性別は不明だが、おそらく女性なんじゃないかと思っている。彼女も私と同様にこの新作乙女ゲームをプレイし始めたらしく、限界オタクのようなツイートを繰り返していた。私はそれを見て、思わず顔がにやけた。そして私は早速ゲームを始めることにした。

第2話→



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作者名:充滞 | 作成日時:2022年11月16日 17時

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