55. 夢の余韻 ページ18
最悪な夢を見た。やけに鮮明な夢だった。
「...前にもあんな夢見たなあ」
決勝戦前だっただろうか。相手の眼鏡を食べたり、何度も刺される夢だった。今日はなんだったっけ...、確か、溺れた自分の亡骸を堀に放り出す夢だった。だが、目覚めると嫌悪感は消えていて、まるで一本の映画を観終えた時のような感覚がした。あくまで一つの作品が終わったような。そんな夢だった。
夢日記を書くことを一度考えた。しかし、紙とペンを用意したもののその手を止める。
「これ書いて、どうなるんだろう」
意味のない記録のような気がした。良い夢ならまだしも、悪い夢をわざわざ書いて今後なんの得になるのだろう。そう思った。なので、やめた。
脳内では体液がドクドクと身体から漏れる自分の動きが走馬灯のように再生される。やけにリアルだった。ふと、思う。もしかしたら、あれは正夢なのではないかと。焼かれた筈の私の遺体が、本当は焼かれていなくて、惨い目に遭ってから水没したのではないかと。
「っ、あ〜〜〜。やーめた!!!事実がどうであれ、私はこの世界で幸せに生きれてるんだから!」
" 本当に幸せ? "
脳内で、自分の声が響いた。私は意識の中で「幸せですけど!?」と怒鳴り散らしながら、一呼吸置いて冷静になる。自信をもって「幸せ」と言い切れない自分が憎らしかった。
何が幸せなのだろう。幸せの定義って何だろう。
幸福感を感じれば幸せなのだろうか。
ある瞬間に絶頂を迎える程の幸せを感じれば幸せなのか。
微弱ではあるが継続的な幸せを感じれば幸せなのか。
耐えがたい苦しみを感じれば、幸せは強まるのだろうか。
それは幸せといえるのだろうか。
「......」
ベッドから起き上がった状態で硬直する。
虚ろな目で、布団に付着している糸を焦点の合わないままじっと見つめる。
この感覚は一度、いや何度か感じたことがある。
それが虚しくて、虚しくてしょうがなかった。だから、この世界に救いを求めたのかもしれない。
今でも充分幸せじゃないのか。
そもそも、この世界に好んで来たのは私だ。なのに、それを楽しめない筈なんてない。
幸せだ。きっと幸せなんだ。そうに違いない。そうでなければ、私自身が許さない。
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ルナストーン(プロフ) - …っ!?(何が言いたいか:最初から照れさせる気だったんですかぁっ!?) (2020年10月12日 0時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - ルナストーンさん» 読者の方を照れさせるつもりで書いたので良かったですー!ハハ (2020年10月12日 0時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ぁ…因みになんですが…消しても大丈夫です。僕は…。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - 充滞さん» ([甘い戯れ]の後のやつの最後に向けてなのです)こちらも見ていて何故だか恥ずかしくなります。 (2020年10月11日 23時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
充滞(プロフ) - 夜月さん» 見てみたいですね〜。いえいえ (2020年10月11日 22時) (レス) id: 48c4c5694c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:充滞 | 作成日時:2020年10月10日 21時