失礼、その子俺の。【及川徹】 (ページ13)

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お見舞いです。ページ13

「及川くんだけですか？」
　ガラッガラの声でそう言ったAちゃんは、げっそりやつれていた。
　疲労えげつな。
「ごめん、俺だけ」
「いえ、全ぜ」
「はいはい、中入っていいね？いろいろ買ってきたから、ちゃんと食べて」
　Aちゃんの言葉を遮り、中へ強引に入る。人助け精神やでぃ！
(ボクが優しいのはいつものことです)
　どこか聞いたことのあるような台詞を内心で呟きながら。
「お金、後で払う、ます」
「だいぶやばそうだからほんとに休んでて！？」
「すみません･･････」
　体調不良の彼女を動かすほど、俺だって鬼畜じゃない。
「台所借りるね」
「･･････はい」
　りんごの皮を剥き、切る。
　レトルトのお粥(プレーン)を温めてお椀に出し、いくつか細かい野菜を入れる。
　買ったばかりの冷えたアクエリをグラスに出す。
「･･････はい、Aちゃん･･････って」
　寝てる。
　ソファ座って、ぐでぇって寝てる。かわいすぎかよ、てぇてぇポイントザックザク。
　ぶかめのTシャツからちらりと見える鎖骨に、ムラッとくる。
(だめ、抑制しろ、俺)
　下履いてる･･････ショートパンツ履いてるだろうけど、見えない！彼氏としては心配でたまらない！
　というか襲い、っごほん。
　ブランケットをかけてやる。
「･･････わ･･････きです」
　ん？
　寝言が微かに聞こえ、俺は首を傾げて耳を澄ました。
「及川、くん、好きです･･････」
「！！？」
　突如として俺の脳の中に入ってきた情報。
　混乱させるのには十分だった。
　あざとい。一種の才能じゃん。
　俺は、柄にも無く頬を赤らめる。
　俺だけじゃなかった、そう思った。
　少なくとも、夢には見てくれている。
　可愛いが過ぎます、お嬢様。
　内心頭を抱える。Aちゃんに変なことはしないつもりだ。つもり。
　だめだ、我慢できない。
　東雲に感謝しよう。
　そう思って、俺は溢れる「好き」を彼女の額へのキスで押し留めた。