通訳ヌナと…【Jungkook：6】

悪者 -Jungkook- ページ5

「っ！ジョングクくん」

目を丸くして驚きつつも、
グクとは呼ばず、
ジョングクくん、と、
スタッフモードのヌナ。

けど僕は、

「電話…したんですけど」

区別なんかできなくて、

「カトクも送ったのに、既読にもならないから…」

気持ちをそのまま口にした。

「ちょ…っ、あの、スマホをホテルに忘れてきちゃって、それで…今からホテルに取りに帰るんですけど…」

立ち上がり、
説明しながら困り顔のヌナ。

いつもバッチリメイクってわけじゃないけど、
いつもより薄く、
ほとんどしてないんじゃないかって見えるのは、
朝早く呼び出されたからか、
久しぶりに見るせいだからなのか。

素に近いヌナを見ていると、
ホテルだったり部屋だったり、
２人でいる時を思い出し…

「今夜は僕も会いたいです」

ポツリとそう口にしてしまった。

「ちょっ！ジョングクくん！」

周りの様子を伺いながら、
焦る様子はなく、
諭すような口調のヌナ。

スタッフモード。

ヌナはやっぱり大人だ。

ううん。
僕が子供すぎるんだ。

「ヌナは違うんですか？」

「ぐぅ…っ！場所、考えて下さい」

あ…
やっちゃったかも。

真顔のヌナ。
口をへの字に曲げて。

怒らしちゃった…のかな。

でもただ僕は、
昨日みたいにヌナからも僕を求めて欲しくて。

だって昨日はそうだったじゃん。

会えないって言ったのに、
顔だけでも…って言ってくれたじゃん。

なのに…

スタッフモードのヌナ。

スタッフモードって何？

やっぱり嫌だ。

僕はできない。

区別なんかつけれない。


「わかりました。…ならいいです」

「えっ、ちょっ、」

ペコッと頭を下げ、
背を向け、ヌナから離れた。



「何やってんだか」

ヒョン達の元に戻り、
ドカッと勢い良く座ると、
ユンギヒョンがそう言ってきて。

「聞こえてたんですか？」

会話が聞こえてた風なヒョンの言い方。
まさか…
そんなに大きな声は出してない…はずなんだけど。

「何焦ってんの？いまさら。聞こえてねぇよ。でも聞こえてもいい、周りに知られてもいい、って気持ちで話してたんだろ？」

「何を…ですか？」

「知らねぇよ。知らねぇけど、お前やAの顔見てたら聞こえなくてもわかるし」

「別に…僕は…ただ…」

ただ会いたいって言っただけ。
好きな人に、彼女に、
会いたいから会いたいって言っただけ。

なのになんでいつも悪く言われるのか。
なのになんでいつもヌナは隠すのか。


僕は悪くない。

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