通訳ヌナと…【Jungkook：4】

話 -You- ページ27

「傘を人に貸されたじゃないですか。それを見て、ジョングクが…突然、車から降りるって、本気で降りようとしたんです」

「え？」

「周りにいたメンバーが必死に止めて、私が振り向いた時にはもう…泣いてて。前にもこういうことがあったんだ、と。その時は自分の服を貸したから、だから今も、って。Aさんが濡れるから、って…泣きながら、Aさんのことが好きだと…言ったんです」

嘘…

驚きすぎて、
声が出てこなかった。

「正直、聞いた瞬間は信じられなかった。あの頃から変わることなく、二度と会えないだろう人を想い続ける…ありえない、って。でもすぐに、やっぱりなって思ったんです」

いつの間にか両目から涙が溢れていた。

するとどうしてわかったのか、
ユンギさんが前からティッシュの箱を投げてくれた。

「私だけじゃなく、ユンギや他のメンバーが見ても、この５年間のジョングクは…本当に痛々しかった。自分の素顔を誰にも見せず、自分自身でさえそれを見ようとはせず、ユンギが言ったように仮面を被り、本来とは違う自分を演じている。演じてると自分でもわかってるのに…演じることをやめようともせず。こんな奴じゃないのに…って思い、でもどうしようもなく、歯痒かった」

「いつだっけ？練習室であいつが壊れた時あったじゃん？お前が友達と連絡取ってるとか、飯行くって話聞いて。考えてみればあの時からかな？さらに酷くなったのは。で、福岡。搬入口で俺らが一緒にいんの見て、でまた打ち上げの時に見て。あぁ…いよいよこいつ、もう本当にダメなんだなって思った」

「ダメ…って？」

「隠すこと、認めないこと、自分に嘘をつくこと。最近は日に日に気力みたいなもんがなくなって、飯もろくに食わねぇし、寝ねぇし。けど身体よりも何よりも、あいつの心が心配で、でも周りがどうこう言って納得するんなら言うけど、そういうもんじゃねぇし。何より自分が自分のことを認めなきゃ始まんねぇから…だから俺は、今日、あいつがお前のこと見つけて、傘を渡したことがきっかけ…なのかなんなのかわかんねぇけど、やっと自分の気持ちを素直に認めて、あんな顔まで見れて…良かったって思ってる」

「勝手だと、不快に思われるかもしれないんですが…正直、私も同じ気持ちなんです。だからAさんに連絡を取って、ジョングクを行かせたんです」

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