通訳ヌナと…【Jungkook：4】

ヌナ -Jungkook- ページ16

「いた……やっと……今度は……っ」

事務室のドアを開けると、
目の前って言ってもいい距離にヌナがいた。

身体をビクッと揺らし、
目を丸くした驚くヌナがいた。

ヌナがいた…

ヌナがいる…

あの時はいなかったけど、
今は違う…ヌナがいる。


それだけで胸がギュッと締め付けられ、
緩みっぱなしの涙腺…
またすぐ目頭が熱くなった。

…と、
まただ。

身体に、
とりわけ足に力が入らなくなって、
ドンッと後ろの壁にもたれると、
そのままズルズルと…
膝の力が抜け、
香港の時のように座り込んでしまった。


ダサすぎる。

何かカッコいい言葉を言って、
引き寄せて抱きしめる…

そんなドラマみたいなこと。

ヌナを前にしたら、
僕は絶対にできない。
今までがそうであったように。


ヌナがいること。
同じ空間にいること。

ヌナが事務所に来てからもあったけど、
自分の気持ちを認めてからは初めてで、
今までと全然違い、
顔を上げて、何をどう言えばいいか…
頭が真っ白で。

けど。

「ちょ…っ、ジョングクさん？誰か…っ！」

ヌナの方は見てなかったけど、
足音と慌ててる空気感を感じたから、
パッと顔を上げ、
目に入った左手首を掴んだ。


「ダメです。行かせません。もう…僕を置いて…どこにも行かせません」

もう二度と。
どんな理由があろうとも。
二度とヌナを離さない、離したくない。


その手に力を入れ手首を引っ張ると、
軽くしたつもりだったけど、
ヌナの身体は思ってた以上に簡単に、
よろけながら僕の元に飛び込んで来てくれた。

ギュッと…
その身体を抱きしめると、
あぁ…やっぱりヌナだ。
ヌナのことが本当に好きなんだ、って思った。

「あのっ、や…ジョングクさん！」

けどヌナは、
僕から離れようと身体を動かした。

しかも。
僕が嫌いな、
その他人の様な呼び方をして。

誰かに。
ヌナ以外の誰かに、
グクくんとか、
ぐぅちゃんって言われたくないのと同じで。

ヌナには、
グクくんとか、
ぐぅちゃんって以外、呼ばれたくない。

セジンヒョンが来るから、と言うヌナ。

ヒョンは来ない。
連絡したのはヒョンだけど、
僕がヌナに会いに来たんだと伝えた。


甘すぎない、
大人な香りがするヌナ。

柔らかな身体。

心地良い温かさ。


勢いで、
我慢できずに抱きしめてしまったけど。

驚かれても、
嫌がられても。

ヌナを離せる気がしない。

名前 -Jungkook-→←ジョングクさん -You-

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