通訳ヌナと…【Jungkook】

無言 -Jungkook- ページ5

白いシャツに紺のブレザー。
襟元の赤いチェックのリボンと、
同じ赤いチェックのスカート。

厨房に近いテーブルに座ると、
鞄からノートや教科書を出し、
勉強し始めた。

ここからじゃ聞こえないけど、
ブツブツと…
彼女が何か呟いてるのが見える。

眉間に皺を寄せて悩んだり、
思い出すように遠くを見たり、
黒のシャーペンを動かして字を書いたり…

僕は、
そんな彼女の姿を盗み見ることがやめらなくて、
…というか、
彼女がこの店にいる時は、
いつも目で追ってしまう。

彼女の元に僕達と同じようなビビンバが運ばれてくると、
サササッとノートや教科書を片付け、
前にいるおばさんと厨房にいるおじさんに向け、

「今日もいただきますーす」

と、両手を合わせて笑顔で挨拶をした。


…と、その時。

「グク、いつもお前食べんの遅い！食べてあげよっか？」

「だ、大丈夫です！」

隣にいたテヒョニヒョンに声を掛けられた。
同時に急にヒョン達の目が気になり出し、
残っていたビビンバを、
慌てて掻き込んだ。




あの子のあの制服って、
結構頭いい学校ですよね？

たしか…そうだったと思う。
名前なんだったっけ…忘れた。

たしかナムジュニヒョンやホソギヒョンと同い年なんですよね？

じゃあ高3？大学行かないのかな？
試験中って言ってたけど、
アルバイトなんかしてて大丈夫なのかな？



こそこそ話すヒョン達。

学校が終わると部活や友達と遊んだりはせず、
真っ直ぐ練習室に集まる僕達にとって、
学校以外の同年代の女の子である彼女は、
いつも僕達の関心の的だった。




「ご馳走様でした」
「ありがとうございました」


食べ終わり、
ヒョン達の後ろに続き、
僕も頭を下げながらそう言って。


食べてる途中だった彼女。
口を押さえながら後ろを向き、
モグモグしながら頭を下げる姿。


「Aヌナ。試験、頑張って下さい」


テヒョニヒョンがそう言って、
後ろにいたジミニヒョンまで同じことを言うと、


「ありがとう。みんなも頑張って！」


と、恥ずかしそうに笑いながら、
笑顔で手を振ってくれた。



ジミニヒョンの後ろにいた僕。

頑張って下さい！

………と、
その言葉がここまで出かかっていたけど。

ジミニヒョンに続き、
真似をして、僕も言いたかったけど。


言葉を発することなんかとても出来ず、
変に握りしめた拳で太ももを叩きながら、
近くのテーブルを見ながら、
無言で頭を下げた。

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