通訳ヌナと…【Jungkook】

恋 -Jungkook- ページ6

ソウルに来るまで、
正直僕に恋なんて…無縁のものだった。

歌手という夢の為、
練習をしたり、オーディションを受けたり…

男友達と遊ぶことはたまにあったけど、
同じ学校の女の子とどうのこうのっていうのは…
なかった。

もちろん今もまだ夢の途中だけど、
事務所の人に、
初めてこの食堂に連れて来てもらった時、
初めて見た彼女に目が釘付けになった。

女の子に目が釘付けになったのなんて、
その時が初めてだった。

可愛い…なんて、女の子に思ったのも、
その時が初めてだった。

でもヒョン達もそう言ってたし、
だからこんなに胸がザワザワするのかな？

どうのこうのはなかったけど、
周りにいた同い年の女の子達。

その子達とは明らかに違う大人っぽさ。
顔も…身体も。
14歳の僕にとって、
彼女はすごく大人に見えた。

だからなのかな？
目が釘付けになったのは。

男兄弟しかいないし、
女の子に対して免疫があるわけではないし、
だからドキドキするのかな？


なんて…
いろいろ思ったけど。


ここに来るたびにその気持ちは大きくなり、
学校で女の子を見ても何も思わないし、
街を歩く、彼女と同じくらいの人を見ても
何も思わなかったから…

これがあの時、みんなが言ってた
好きな人…ってことなのかな？って思うのに、
そう時間はかからなかった。

後々。

ヒョン達や、
食堂のおばさんが話してくれた話で、
彼女は僕より3つ年上の、
高校2年生なのだと知った。

特別なことがない限り、
毎日ここでアルバイトをしているということ。

頭がすごく良く、
中でも英語がとても得意なのだということ。

後は、
『Aさん』という名前だということ。



知ってるのはただそれだけ。



けど、
僕には充分だった。

話したこともない。
話しかけたこともない。

目が合ったこともない。
見てるだけ。

たまに彼女と友達のように、
自然に話すヒョン達を見て、
羨ましいな…とは思うけど、
話しかけるなんて、
目を見るなんて、
絶対に僕には出来そうになかったし、
僕にはまだ、
その時の僕にはまだ…
見てるだけで充分だったんだ。


ソウルにはまだ仲の良い友達もおらず、
一緒に住んでいるのは、
僕よりも2つ以上
年の離れたヒョン達ばかり。

誰にもこんな気持ちを話せず、
だからこそ、
見てるだけ…
一人で想ってるだけで充分だったんだ。

中3の夏休み…
あの日までは。

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