JIYONG -2-

大人の女 -Jiyong- ページ19

「わかってますよ。そんなこと。そこまでバカじゃありません」

傷ついたように見えたのは、
やっぱり見間違いだったのか…

ニコッと笑顔でそう言って。

そこまでバカじゃない…
どういう意味？

疑問に思ったけど、

「すごい本の数ですね」

正面にある本棚を見て、Aがそう口にしたから。

「詩集はね…こっちの方」

どうしようか迷ったけど、
掴んでいた手首をそのまま引っ張った。

寝室の照明は元から暗めにしてあるから、
本を見つめるAの顔はオレンジ色に染まってる。

「見ても…いいですか？」

「あ、うん。どうぞ」

急にこっちを見てそう聞かれた時、
一瞬驚いて、慌ててしまった。

さっきまでの緊張しまくるAも、
初めて見た姿だった。

可愛くて、面白くて。

そして、今 見ているAも、
初めての…ん？あれ？
なんか見覚えがあるような…

初めて見るAかと思いきや、
ふと、前にも見たことがあるような気になった。

オレンジ色の明かりに染まり、
本を持ち、文字を目で追うその姿は…
初めて…見る、Aの女の部分に見えた。

さっき、全然そんなつもりないって言ったけど、
部屋の奥にある自分のベットが目に入ると、
急に意識し始めてしまった。

今まで一度だってそんなこと思ったことなかった。

正直…
Aにそういうことを思うのは、
Aをそういう対象にしてしまうのは、
Aを汚すような気がして…
自分の中で、そう思ってはいけない！って思っていた。

けど、俺も男で、そういうコトはするわけで、
なら、Aも女だから、そういうコトをするわけで。

そう思ったら、
なんともいえない複雑な気持ちになった。

「どれがおススメですか？」

「え…あ、えっと…これとかどうかな？」

「表紙がすごくキレイ。本当にお借りしてもいいんですか？」

「うん。ゆっくり読んで」

「ありがとうございます」

「貸す…かわりに、１つお願いがあるんだけど」

「お願い？」

「敬語…いい加減、なしにできない？それから、ジヨンさんってのも」

「え…それは…」

「2人でいる時だけでもいいから。同い年だし…何より、よそよそしすぎるから…嫌なんだけど」

嫌…って。
子供か、俺は。

Aだって、大人な女のわけで、
そういうコトもするんだ…
そういうAを知ってる奴もいるんだ…って思ったから、遠すぎて壁を感じる、この今の関係が少し嫌になって。

もっと、近くにいたくて。

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