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三十二話 ページ35

久し振りに、私は探偵社を訪れていた。
乱歩さんへのお土産の駄菓子を持って。



『こんにちはー。』



扉を開けると、私に一斉に注がれる視線。
ぱあっと顔を輝かせて最初に駆け寄ってきてくれたのは、敦くん。



「中原さん! お久し振りです!」

『お久し振りです。最近忙しくて………これ、乱歩さんにお土産です。』

「本当に!?」



駄菓子の袋を受け取ると、子供の様にはしゃぐ乱歩さん。

皆も迚も幸せそうな顔をしている。多分、私も。


こんな幸せな時間がもっと続けば良いな、なんて今更思う。
でも、もう決めた事だから。



すると、電話が鳴った。
兄ちゃんからだ。



『もしもし。』

「早く帰って来い。もう迎えが来てる。」

『……………うん、分かった。』



電話を切って、私は皆に向き直った。



『私、そろそろ行かないと………』

「また遊びに来てくださいね!」



そんな賢治くんに頷く事も出来ず、私は曖昧に笑った。
遊びには、多分来れない。



『じゃあ………さようなら。』



最後に精一杯の笑顔を作り、私は探偵社を後にした。


外に出ると、太宰さんが居た。



「何か、企んでる?」

『………隠してる事はあります。』




太宰さんは全てを理解している様な顔で、ふっと笑った。
流石は兄ちゃんの元相棒、というとこか。



「別に引き止める訳じゃないけど。でも、もうAさんに会えないのは残念だなぁ。」

『会えますよ。多分、敵として。』

「それは更に残念だ。」



目を合わせて、私達は思わず笑った。



『それじゃ。もう行きますね。兄ちゃんに宜しく伝えておきます。』

「勘弁してよ………」



太宰さんは肩を竦めた。
私は太宰さんの真似をして、コートに手を突っ込んでその場を去った。



家に戻ると、黒塗りの車が止まっていた。
後部座席の窓が開き、兄ちゃんが顔を覗かせる。


「もう行くぞ。乗れ。」

『うん。』



もう、今までの日々は送れない。
その覚悟を決めて、私は車に乗り込んだ。



備えなければならない。
いずれヨコハマを脅かす、巨大な脅威に。

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作品ジャンル:アニメ
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桃茶(プロフ) - 詞音さん» ありがとうございます!夜中の3時…!?ちゃんと睡眠も取ってくださいね!w (2018年4月9日 7時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
詞音 - 面白かったです!ついつい夜中の3時後まで読んでしまいましたw 他のも見ときます! お疲れ様でした。(´∀`) (2018年4月9日 3時) (レス) id: 6b5092fe94 (このIDを非表示/違反報告)
桃茶(プロフ) - 御免なさい、三十二話とあとがきが何故か消されていて……形的にはこれで終わりです!閲覧ありがとうございました! (2018年4月3日 13時) (レス) id: d281eb019e (このIDを非表示/違反報告)
悠爽 - 終わるんですか!?とても良い作品だったのに!でも作者さんお疲れ様でした。とても素敵な作品で面白かったです!!! (2018年4月3日 13時) (レス) id: e139e0903a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - え・・・終わっちゃうの!?・・・・・おもしろかったです!! (2018年4月3日 12時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:桃茶 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年10月26日 0時

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