弐壱 彼の願望 ページ22
「もちろんいいですよ!」
「一つ目、無理して笑うな」
え………
「無理なんて……してないです」
「嘘でィ、本当は弱虫な癖に。もっと…俺を頼れ」
………………どうして。聞こえてしまうんじゃないかと思うくらいに…脈が早いのは……何故?
気付けば顔を見れなくなって、庭の方を向く。
「分かりました。二つ目は?」
「んー。んじゃ、俺のこと名前で呼んでみろィ」
「…え………総悟…さん…」
「何でさん付け何でィ…まぁいい。それより、顔真っ赤になってますぜィ」
けらけらと笑うその横顔をちらっと覗けば、総悟さんはそれに気付いてこっちを向くと、私の頭に手を置いてまるでりんごと言ってきた。
「三つ目は………お前ィ俺に生きててほしいのなら心配かけさせんじゃねェよ?」
「はい……」
………離れたくない。この温かな心地から…
無理なことなんて、知ってる……
「よしよし。素直な犬だ」
………離したくねェ。ただ側にいてほしい
分かってるんだ。無理だって…
“『それなら、幸せになってほしい』”
また陽は夜を呑み込み朝をもたらす。
それは、夏休みの夜と似ている気がする。いつか終わってしまう。そんな悲しさを含んでいるんだ。
私は、彼の記憶の中でどんな存在として残るの?それとも……消えてしまうの?
私の、消えてしまった…記憶のように。
私には、小学3年生以前の記憶がない。
字を書いたり、話したりするのには支障はなかったが、兎に角心細かった。
覚えているのは、自分の名前だけで優しく話しかけてくれる女性のことも全く分からない。
でも、あぁこの人が私のお母さんなんだとは思った
『ごめんね。ごめんね……A』
『どうしたの?泣かないで…』
泣きながら私を抱きしめてくれる。
それからは心配させないように、何があっても悲しませないように明るく笑った。
お父さんはいないようで、朝から晩まで必死に働いてくれたお母さん。
とても聞けなかった。お父さんのことも、私自身のことも。それでも、嬉しかった。頭を撫でてくれる時や、一緒に笑い合えた時。
でも……それから数年後。私が中学生の時、過労が祟ったのか亡くなってしまった。
ずっと後悔してる。ありがとうって言えなかったこと。大丈夫だよって安心させてあげられなかったこと。それに大好きだよって…言いたかった。
……お母さんは、幸せだった?
伝えたい気持ちも、気付いた時には遅すぎた
私は強くなりたい。もう、誰も悲しまないように
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千の歌を歌う人(プロフ) - コロさん» 有難きお言葉です!!すごく嬉しいです!頑張ります!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
コロ - おもしろいです!!更新忙しいかもしれないけど頑張って下さいね!! (2019年7月29日 22時) (レス) id: 21d6130453 (このIDを非表示/違反報告)
千の歌を歌う人(プロフ) - サラダ油さん» ぱっちゃんはですね、主人公が付けたあだ名です!主人公は色んなあだ名を人に付けるもので…見てくれて、物凄く嬉しい限りです!!頑張ります! (2019年7月29日 20時) (レス) id: 1dfb43aa3f (このIDを非表示/違反報告)
サラダ油 - 新八は「ぱっちゃん」じゃなくて「ぱっつぁん」と呼ばれてますよ。面白いのでこれからも頑張って下さい! (2019年7月29日 18時) (レス) id: 3eb4c4dfa2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くれの | 作成日時:2019年7月24日 22時