或る太陽の話 ページ33
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初めて見た時彼の頬にはフォークが刺さっていた。
正直言うと一体どうしてそんな事が起こったのだと困惑していた。
それが第一印象だった。
その後は隠れ財産によりブチャラティは幹部へのし上がった。
そしてフィレンツェ行き特急列車の亀の中でナランチャにある女性の写真を見せて貰った。驚愕した。
その女は同級生の彼女だった。
ナランチャから人物像が語られる度、二人がいかに硬い絆で結ばれているかが痛い程よくわかった。
痛い程よくわかったんだ。
だから四月初めのあの日、ナランチャが空洞になった日。
俺は激しい後悔の念とやるせなさに苛まれた。
何故だと自問自答を繰り返す。
彼には故郷に待っている女性が居るのに、別れだってしていないだろうに呆気なく殺された。
遺体を運ぶ際ナランチャのポケットから写真の束を回収した。
それは所々彼の血が付着していて彼女に見せるべきか否かとても迷った。
だがミスタは言った。
「見せなくてどうするってんだ。
二人のふかぁい愛情はよ、ジョルノより散々聞かされてきたんだぜ?
その愛情の一つを俺達が持っていてどうするんだ、ちゃんと二人に返すんだよ」
その通りだ。
彼を彼女の元へ帰さなければ。
数ヶ月後、墓場で再会した彼女は生きる事を溌剌と宣言した。
こんなにも愛し合っていたのに。
こんなにも二人は美しかったのに。
一瞬で奪われてしまった。
悔しさに唇を噛み立ち去る彼女を見送った。
その時僕は目を見開いた。
疲れているのかもしれないと目を擦ってもう一度見れば消えていた。
やっぱり幻覚だったのだろうか。
Aさんの横に並び愛おしい人を見る目をしたナランチャが、見えた気がした。
「__...え!?ナランチャが居たの!?その時!?」
味のしない紅茶を片手にAは身を乗り出して驚きの声を上げた。
約80年ぶりに天国へ戻ってきた(らしい)ナランチャはAと共に来た。
すっかり打ち解け血腥い事がないこの世界で今はゆっくりと無限の時を過ごしている。
思い出話をしようとなったので、そう言えばAさんは知らなかったらしくとても驚いたようだった。
「ええ、僕にはそう見えました」
そう言えば彼女は顔を真っ赤に染め上げ口をパクパクと動かす。
話の流れは完全に二人の話へなっていた。
次は誰が話すのだろう、と少し期待を込めて僕も紅茶を一口あおった。
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ぱ - ほんとに...ナランチャ...いやほんとにいい話でしたほんんとにありがとうございます...!!!!! (2月20日 23時) (レス) @page26 id: d599ec02c4 (このIDを非表示/違反報告)
食人(プロフ) - こんなに泣くとは思わなかった…すごく、素晴らしい作品です (2022年7月26日 13時) (レス) @page47 id: e21618e8ed (このIDを非表示/違反報告)
れい - 顔がぐちゃぐちゃになりました...本当にいいお話で、すごかったです!(語彙力なくてすみません)このような作品を読ませて頂いてありがとうございます!この作品に出会えてよかったと本当に思います...二人が本当に幸せになれるように祈ります...(長文失礼しました) (2021年7月24日 0時) (レス) id: 231e6087c7 (このIDを非表示/違反報告)
青 - 号泣しました…。目擦りすぎて睫毛ぼろぼろ抜けました。私の持ち得る限りの語彙力を総動員しても、この素敵な作品の尊さを表現し尽くすことはできないかもしれません…。本当にこの作品と出会えて良かったです。全細胞がディモールトベネ!と喜んでます…… (2021年3月22日 4時) (レス) id: fc7ac22f29 (このIDを非表示/違反報告)
鈴鶴@メガネ=本体(プロフ) - イスカさん» ありがとうございます!しかも他の作品まで...!圧倒的感謝です!!これからも精進して参ります! (2019年9月27日 22時) (レス) id: 022f546ed4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鈴鶴@メガネ=本体 | 作成日時:2019年6月30日 22時