彼女の正体が何であれ【鬼滅の刃】【遊郭編】

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遊郭の中心街だけでなく、私たちが今避難しているこの場所も酷い有様だった。


あちこちから悲鳴や泣き声が聞こえ、血の生臭い匂いや死体の匂いが充満している。


まるで現実世界の地獄のようだ。


私は、阿鼻叫喚のその景色を見つめて思った。





突如、この場に合わない、よく言えば楽しげな、悪く言えばふざけたような声が聞こえてきた。


A「ねえねえ聞いた？今殺されかけてるのって、京極屋の蕨姫らしいよー！」


B「えほんとにー？蕨姫ってあれだよね、後輩に暴力振るうのは日常茶飯事の人でしょ？」


A「そうそう！あと楼主さんに土下座とかさせてたみたいだよ」


B「クズじゃん！そんな人がここにいるとか恥だわー」


・・・は？


私は一瞬放心状態になって二人を見つめた。


蕨姫が、恥？


A「早く殺されてほしいよねそんな人」


B「ねー！今までやってたことの報いを受けろっての」


今・・・なんて言ったの・・・？



ぶちっと音がした。


見ると、いつの間にか握りしめていた着物の袖の端が破れている。


身体が怒りで熱くなっていくのを感じながら、私は蕨姫の悪口を言っていた二人のところへ歩み寄った。


A『・・・あの』


A「えっと・・・確か京極屋さんとこの子だよね？名前はー・・・あー・・・」


A『Aです』


A「それだそれだ！ところで、急にどうしたの？」


A『貴方達、最低ですね』


咄嗟に出てきたのがこの言葉だった。


二人は一瞬固まってからみるみるうちに顔を赤くした。


B「は？はぁ！？なんなのこの子失礼すぎじゃない！？」


A「急にそんなこと言うとか、どうかしてるでしょ！！」


A『どうかしてるのは貴方達の方です』


私は激昂する二人とは対象的に、至って冷静に、そして冷酷に言った。


A『貴方達は蕨姫と話したことがあるのですか？ちゃんと関わったことがあるのですか？ないですよね？それなのに勝手なことを言わないでください。

貴方達が言っていたことは事実です。だけど蕨姫は最低なんかじゃない！！鈍臭い私のことを、遠回しに褒めてくれました。私が考え事をしているのにもすぐ気づいて、少しだけ助言もくれました！蕨姫は不器用なだけで、本当は優しいんです！！』


私の剣幕に、二人は魂を抜かれたような顔をして立ちすくんでいた。


やがて、言った。


A「なんで・・・そんなに庇うのよ」


A『・・・ただ、ある人達よりも優しいから。それだけです』

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