第103夜 暗殺者と牢。 ページ5
「＿＿＿＿……」
寒い。
そんな感覚を覚えた。
恐る恐る目を開ける。
そこには、錆び付いた天井が見えた。
「……＿＿＿＿は？」
フッと横を向くと、
「＿＿＿＿成る程な……」
檻があった。
「……迂闊だった」
錆び付いた天井、檻。
これらに結び付くものは、ひとつだけ。
「……牢に、入れられた……」
あぁ、油断した。
気を失ったりなんかしなければ。
「バカ……バカバカバカバカバカ、Aのバカッ……くそお……！！」
自己嫌悪……
牢か……
覚悟はしてた。
「……寒い」
私は、バカだ。
だって。
＿＿＿＿＿＿＿＿……あの人逹だったら、許してくれるかもしれないって。
あの人逹だったら、私を救い出してくれるかもって。
バカな理想を心の隅で抱いて。
「……バカ……」
後になって後悔して。
「……」
目頭が熱い。
何かが頬を伝う。
……思ってない。
「辛いなんか……寂しいなんか……思ってなんかない……！」
涙は止まらない。
もう嫌だ。
「ッ……寒い……寒い……」
壁にもたれて、膝をギュッと両腕で包んだ。
服が、変わっていた。
グラデーションドレスだった姿からは一変し、ボロボロの穴だらけのワンピース。
ブーツに代わりに足は裸足。
容姿は相変わらず藍色のボブショート。
ロイムもいない。
コインもない。
……何もない。
こんな監獄でこんな服装で独り。
なんだか、
「……残酷だな……」
母さん、怒るだろうな。
『Aは女の子なんだから、体を大切にしなさいね』
「……無理だよ」
カタカタと全身が震える。
地下だから、太陽の光が来ない。
「暗いし……寒い……」
ふと、檻の近くを見た。
「……」
暖かそうな湯気がたっている、食事があった。
スープに、パン……だろうか。
食べたい。
でも。
「私をこんな場所に来させた奴らが作ったもんなんて……死んでも食わねえ」
ま、当然のこと……だけど、さ。
「……」
あの時。
ああすればよかった。とか、こうすればよかった。
なんて思った。
もう、遅いけど。
私は食事に手を伸ばすと、
＿＿カシャン
それを乗せたトレイごと、牢の外に投げ捨てた。
「……これでいい」
心内で、どうしようもない感情が渦巻いていた。
「……寒いよ」
誰か。
ねえ、誰か。どうか……
私の傍に寄り添って。
「私を、独りにしないで」
第104夜 政務官と牢中の暗殺者。→←第102夜 暗殺者と暗闇。
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紫陽花 まろ(プロフ) - 涙が最後に出てしまいました．。6年も前の作品ですが、こんなに素晴らしい作品を有難うございました！ (2021年6月12日 6時) (
レス) id: 8b270542da (このIDを非表示/違反報告)
すず - 感動しました！すごくすごくおもしろかったです！無理しない程度にこれからも頑張ってください。応援してます (2015年11月21日 20時) (レス) id: 16ba3c73d0 (このIDを非表示/違反報告)
さっくり - うっかり涙が… 感動しました！完結、おめでとうございます。 (2015年9月27日 21時) (レス) id: dcacea1d09 (このIDを非表示/違反報告)
夜桜 - 感動しました！ありがとうございます (2015年2月22日 20時) (レス) id: 9f8b102774 (このIDを非表示/違反報告)
芽音亞((スマホ - クロさん» そう言っていただけてとても嬉しいです!! (2015年1月25日 12時) (レス) id: b9f8c5bcfd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：芽音亞 | 作者ホームページ：http://あったりなかったり←
作成日時：2013年11月9日 7時
