一話 ページ2
「私は鈴蘭景清。織田信長の妻、濃姫こと帰蝶様の刀だ。主様に仇なす者は主様の旦那であろうと斬り捨てるからな。女だからと油断するなよ?」
刀剣女士はそう言うと口を閉ざした。
鍛刀部屋は静まりかえっている。理由は簡単。予期せぬことが起きたからだ。
ある者は政府からの通知にはなかった初めての刀剣女士の姿に驚き、ある者は自分の目の前にいるのが己が知る者かを考え、またある者は自分の言葉になんの反応もないことに困惑している。
「えっと、主様?私はどうすれば良いのだろうか」
その空気を鈴蘭景清が見事に打ち砕いてみせた。審神者もようやく正気を取り戻して、いつも通りの笑顔に戻った。
「そうだね、ごめんね。まず私がこの本丸で審神者をしている蓮です。失礼だけど鈴蘭景清は女の子で合ってる?」
蓮がそう尋ねたのは、自身が審神者になって間もない頃に乱藤四郎を見て女だと勘違いし、顕現後一週間は女として接してしまったからだ。
その時は、まさか。と考えた当時の近侍である加州清光が乱藤四郎は男だと蓮に告げた。
それ以来性別の判断がしにくい者は顕現後に同じ質問をされるようになったとか。ちなみにその中には次郎太刀や骨喰が入っているとかいないとか。
鈴蘭景清はそれの対して嫌な顔をすることはなく、軽く笑って言葉を紡いだ。
「ああ。一応、刀剣女士というものらしい。あと鈴蘭で構わない。鈴蘭景清は長いだろう。改めて、よろしく頼む、主様」
「うん、よろしくね鈴蘭。ああ、こっちは今近侍をしてもらってる薬研藤四郎。……薬研、どうしたの?」
蓮が話しかけても薬研は目を見開いたまま鈴蘭を見つめる。
「薬研、なのか。久しいな。息災だったか……ってうわっ!飛びかかるな薬研!」
「鈴蘭、会いたかった。もう会えないかと思っていた。」
薬研は誰にも顔を見せないように鈴蘭の肩に顔を埋め、その両腕できつく抱きしめた。
鈴蘭もそれに抗うことなく、静かに薬研の抱擁を受け穏やかな笑みを浮かべる。
「ん?いやいや、ちょっと待って。私だけ全然理解出来てないんだけど」
そう、それは蓮を残して行われていたのだ。
腕の中には薬研。目の前には狼狽える審神者。
鈴蘭は二方を順に見て、暫し考えた後にパッと顔を上げた。
「そうか、主様は知らないのか。私と薬研は夫婦刀なんだ」
次の瞬間、本丸内に蓮の絶叫が響いた。
155人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ハク - 薬研君はガチで癒しやね.最高や,作者ありがとうな, (2020年11月27日 16時) (レス) id: 0830061a27 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 薬研がマジでカッコよ… (2020年10月25日 17時) (レス) id: 0830061a27 (このIDを非表示/違反報告)
かずほ(プロフ) - 最近 刀剣乱舞にハマりました!薬研推しです。更新頑張ってください! (2020年8月8日 6時) (レス) id: e1ffbbade3 (このIDを非表示/違反報告)
氷鷹大河(プロフ) - 頑張って下さい! (2019年7月22日 22時) (レス) id: efc23e3cad (このIDを非表示/違反報告)
リリ(プロフ) - ヤバイ…可愛い!癒やし! (2019年7月22日 1時) (レス) id: 4acf213d6b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:希麟 | 作成日時:2019年3月17日 4時