嗜好 ページ30
.
｢そういえばお前には好みのタイプを聞いてなかったが、最初の会話からつまらない奴だとわかっていたからな｣
グラグラと霞む視界。さっきより増した頭痛。割れた木片が腕に突き刺さっている感覚。一呼吸して、器官が警笛を鳴らした。堪らず咳き込んでぶっ飛ばされたと知る。
一体何秒意識を飛ばしていたんだろう。悠然と佇むマッチョは準備運動だというようにぐるりと腕を回し肩を鳴らしている。思わず口角が引き攣る。
コイツ、俺が負荷させた重力を身体を呪力で固めて対抗して無理矢理戻ってきやがった。脳筋過ぎると乾いた笑いが漏れて、膝に力を入れ立ち上がる。
まだ倒れられない。伏黒の事だってそうだし、俺はもう負けてはいけないのだから。皮が剥がれても四肢が弾けても人間じゃなくなったとしても、俺は務めを果たさなきゃいけない。
｢だがこれは一方的なものだろう？高田ちゃんも人を偏見で決めつける人は嫌いだと言っていたからな。もう一度聞こう、どんな女がタイプだ｣
静かに笑うマッチョに思案する。
ここでもし俺が質問を無視して戦いを仕掛けても、勝ち筋はほとんどない。なら、質問に答えてからカウンターをかけた方がいいか。
色恋には対して興味はない。彼奴みたいに特定の好みがある訳でもなし、相手に求める条件と考えてそのまま出てきた答えが何となしに滑り落ちた。
『…他人の為に死なない奴、かな』
｢オマエもやっぱりつまらんな。やる気がまるで感じられん｣
目の前の呪力が高まって、いつでも相手の攻撃に備えられるように細く息を吐く。緩く拳を握った所で、別から溢れ出る呪力に驚いた。
｢…下手に出てりゃ偉そうに。そこまで言うなら、やってやるよ｣
伏黒の手が印を組んで、ゾワリと全身に鳥肌が立つ。この場にいる誰よりも高密度な呪力。伏黒からソレが出てることに何故か嫌な予感がして、声が漏れた。
『伏、』
｢"動くな"｣
次いでパンダ先輩の強烈なパンチがマッチョに入る。
どうやら先輩が異変に気付いて来てくれたらしい。それでも俺は伏黒が気になって、痛む体を無視して駆け寄った。
『伏黒、』
さっき、何しようとした。
そう問おうとして、伏黒の顔をみて口が止まる。
｢…あの時、止めて悪かった。無理矢理にでも宿儺に変わらせなきゃ良かった。俺の判断ミスだ｣
『…伏黒のせいじゃないよ』
なに辛気臭い顔してんだよと笑い飛ばしたかったのに、口から出たのは当たり障りのない否定だけだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1410人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです！ (9月8日 3時) (
レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります！ (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです！続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます！ (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます！ (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作成日時：2022年8月31日 19時
