なんでここに？ ページ11
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私は思わず逃げだしてしまった。
あの後、ともが上手くフォローを入れてくれたけど、私の中では後悔の方が大きかった。だからいたたまれなくなって逃げ出してしまったんだ。
周りのみんながテレビに慣れてないのなんて知ってるし、本番を失敗したくないって気持ちも分かる。私も芸能界の時はそうだったし。
だからピリピリしちゃうのも分かる。注意してくれる人にも腹が立つし、できない自分にも腹が立つ。
監督も、芸能界にいたのは私だけだから指導しなくてもできるだろうっていう信頼をもってくれてるのも分かる。
落ち着いて考えれば、全部わかるのに。
私も同じようなことがあったって話せば少しでも分かり合えたはずなのに。
『ダメだなぁ･･･』
「何がダメなんだ？」
『うわぁっ！？』
一人でしゃがみこんでいると急に横から話しかけられた。
声の主は･･･。
『い、衣更さんじゃないですか･･･はは･･･』
もちろん衣更。
なんでいるんだここに。仕事じゃないのか。
「ははっ！驚きすぎて敬語になってるぞ？ごめんな、ちょっと驚かしてみたかっただけなんだ」
そんなとこで高校生みたいなのいらないから！
『な、なんでここに？仕事は？』
アイドル科と演劇科って校舎違うのに。
「それはこっちのセリフなんだよな。ここアイドル科だぞ？」
『へっ』
慌ててキョロキョロと当たりを見渡すと、人は見当たらないが確かに見覚えのない場所だ。
知らない間にアイドル科と繋がっている渡り廊下を通ってしまったのか。
『ご、ごめん！すぐ帰るね』
「いや、いいよ。俺しかいないし。なんなら受付で話すか？そこなら女の子がいても不思議じゃないし」
受付って、この男わかってんの？
そこの場所で私告白されたんですけど？まだあの時のこと覚えてるし感覚もある。そもそも忘れるわけないと思う。
『ここでいいよ』
思い出して変に照れるのも嫌だし。
「それで？何がダメなんだ？」
『いや、別に衣更には関係ないことだし･･･』
「俺が聞きたいの。ご近所同士の仲だろ？」
まぁ、悩みは人にうちとけた方がいいって言うし。衣更になら言ってもいいかな。
『えっとね･･･』
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作者名：さかな | 作成日時：2023年3月31日 0時
