Episode 01 ページ2
「初めまして、Aです」
小さく頭を下げるとキャラメル色の髪がさらさらと零れて、菖蒲色の瞳に睫毛の影が落ちる彼女は志麻くんの従姉妹。
出会いはどこにでもあるようなものだった。
志麻くんと出かけたカフェで働いていたのがAさん。
店長に申し出てエプロンを外しながら来て、自己紹介と共に礼をする。
動作がおしとやかで、声が綺麗で、大人っぽくてふんわりとした柔らかい雰囲気で。
心臓を掴まれるような感覚に陥って
――恋に落ちた。
彼女の方をそっと見れば不思議そうな顔でこちらを見つめていて、視線が交わった。
「センラさん、ですよね。志麻くんからお話聞いてます」
「っえ、あ、な、なんて……?」
「しっかり者でみんなをまとめられる柔らかい雰囲気の、素敵な人だって」
素敵な人――。
志麻くんが言ってたことっていうのは分かってる。でも、そんな褒め方を好きな人にされたら心が踊るに決まってるじゃないか。
「A、センラさん好きなんやろ?」
「え?」
「は、はぁ!?」
待って、その好きはなんの好き?
いやもうなんでも嬉しいからええわ。
Aさんは口元に柔らかい笑顔を浮かべて告げた。
「歌い手としてのセンラさんが、なんですけど……」
「…………ふふ、そっかぁ、ありがとう」
知っていた、知っていたけど!
好き、ならいいや。
考えることとかめんどくさくて人形みたいに整ったAさんの容姿を眺める。
「月屋さんー?」
「わっ、はい! 今行きます! じゃあ、失礼します。センラさん、志麻くん、またお話しようね」
彼女は店長さんに呼ばれてしまう。
小さく頭を下げてぱたぱたとキッチンの方へと駆けていった。
一瞬だけ見えたのは目にかかった横髪を華奢な指で耳にかけた、綺麗な横顔だった。
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蘭渚(プロフ) - ただのセンラ―さん» いえいえ〜!ありがとうございます、聞いてみますね〜! (2019年5月27日 20時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
ただのセンラ― - コメ返ありがとうございます!さかたんが歌ってるのでおススメですよ((更新楽しみにしてます (2019年5月27日 19時) (レス) id: 48d1717d9d (このIDを非表示/違反報告)
蘭渚(プロフ) - ただのセンラ―さん» コメントありがとうございます!わぁ、すごい嬉しいです!友達から聞いてタイトルだけ知ってる感じですかね〜、少し参考にしましたけどね……!本当に嬉しい言葉ありがとうございます、頑張ります! (2019年5月27日 19時) (レス) id: b3cf2c91ae (このIDを非表示/違反報告)
ただのセンラ― - 題名からして大好きです。あれですかね、「僕は君のことが好きだけど君は僕のことが別に好きじゃないみたい」とか意識しましたか?(違ったらクソ恥ずかしい)まぁ、とにかく好きです。これからも頑張ってください (2019年5月27日 19時) (レス) id: 48d1717d9d (このIDを非表示/違反報告)
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