【歌い手】君に幸福を、僕に愛を。 (ページ6)

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Ⅰ「出会い」ページ6

ぼんやりとした視界の中、見えた彼の顔は整っていた。
サラサラした白髪に先端が薄い紫のグラデーションになった髪と透き通った心配したように細められた色素の薄い紫の瞳。
全体的に色素が薄く、肌は陶器のように白く、正反対に口紅でも塗ったのかと疑うほどに真っ赤な唇。
黒いTシャツと足首が見える長さのズボン、その上に薄手のパーカーを羽織ったラフな格好。

「A？大丈夫？怖かったよな、」

フリーズしてただけなのに、彼は心配そうに目を細めて顔を覗き込む。
少し考え込んだ素振りを見せたあと、「家入ろ」と繋いだままの手を引っ張った。
私の家は思った以上に近く、目の前にあった。
敷地は広く、その広さに感動しながら手を引かれたままに歩いていたら、玄関の前で止まった。
テレビとかで見る豪邸のような家。
両開きの白い扉に豪華なインターホン。

彼が玄関の扉に手をかけて、引くも開かない。
押すやつだったり？とか考えていたらうわ、と彼が顔を顰めた。

「うらたーん、ルスやけど。扉閉めんといてー」

トントン、と華奢な指が扉をノックする。
luz、というのかこの人は。
しばらくそのうらたんという人の名前を呼んでいればバンッと扉が派手な音を立てて開く。

「家を出る時は鍵閉めろって言ったのはどこの誰だよ！」

不機嫌そうに眉を顰めたluzさんよりも背が低い茶髪の青年。
ぴょこぴょこと跳ねたミルクティー色の髪と翡翠色の瞳。
少し寒いからか女子が着そうなゆるふわ系みたいなもこもこしたパジャマ。
そんな可愛らしい容姿とは正反対に機嫌の悪いドス黒い声にギャップを感じる。

「あっ！ A！！おかえり！ luzといたんだ！家出る時は言ってよね、心配した！」

え？
ぱぁっと顔を輝かせて私の手を取り、ブンブンと振る青年。
さっきの怒りはどこに行ったの？

「ちょ、うらたん聞いてや、Aな、トラックに轢かれかけてん」
「は？誰その運転手。地獄の果てまで追っかけてボッコボコにしてやる」

luzさんが言った言葉に派手に舌打ちをする。勿論、私の手は掴んだまま。
ただ、怒りなのか段々力が強まってきている。痛い。

「ちょちょ、うらたん？痛い！」
「えごめん。てか、俺の事うらたんって呼んだよねいつもはうらたさんなのに！え、可愛い～！！」

呼び方、間違えたらしい。