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「……あのっ、あの!!」
その時、宣言通りフルボッコにされて地面に転がるわたしたち3人を庇うように飛び出した幸男さんが、両手を広げて膝を着いた。
「すみません…すみません!全部、借金した自分が悪いんです!!殴るなら俺を殴ってください!!!!」
……ずっと、信用してきた。自分たちに手を差し伸べてくれたヒーローだと思っていた。
だけどそれはただの幻像だった。泣きながら訴えかける妹の姿に…そして身を呈して立ち向かう幼なじみの姿に、全てを理解した。この惨劇は紛れもなく自分が招いた事態であって、今更後悔しても遅いのだと。
穏やかな笑みを浮かべていた顔を涙でぐちゃぐちゃにした幸男さんは、何度も何度も謝りながら土下座をした。
「やめて……お兄ちゃん…………」
堪えきれなくなった涙をぽろりと零した水野さんが、力なく座り込みながら弱々しい声で呟く。しかしそんな声は男たちの怒号に掻き消されて。暴力に飢えた取り巻きたちの矛先は、完全に幸男さんに向いた。
…………押さえつけられて動けないわたしの目の前で、幸男さんが袋叩きに遭っている。
結局はこうなってしまうなら、わたしは何のために飛び出してきたんだろう。彼女たちを助けることは、もうできないのか。救けたいという気持ちばかりが膨らむけど、現実という壁はどこまでも高くて。どれだけ手を伸ばしても届かないもどかしさと不甲斐なさに涙が滲む。
「俺……みんなに迷惑かけてばっかで…!ほんとごめん!!」
腫れ上がった顔に幾つもの涙の筋を残して、幸男さんが両手を地面に着いた。しかし安藤はトドメだとばかりに容赦なく顎を蹴り飛ばして、とうとう崩れ落ちた幸男さんを踏みつける。
「お前ら踏みつけられるの慣れとるんやろ?まだまだ足りんのう」
そう言って取り巻きたちの喝采を集める安藤は余裕の面持ちどころか、その身体にかすり傷のひとつも負ってない。
やっぱりわたしたちじゃ安藤には勝てないのか、と悔しくなった。
……その時。
「…………何じゃ、ワレ」
何かが倒れるような音がして、カツカツ、と誰かが歩いてくる足音が響く。安藤が威嚇しながら訝しげに眉根を寄せるから、なにか異分子が飛び込んできたのだと分かったけど。ぼやける視界では、とてもそれが何かを理解しきれない。
ただひとつ認識できた“白い色”は、ボコボコにされて動けないわたしたちの前でぴたりとその足を止めた。
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リュウ - 毎日更新ありがとうございます。毎日チェックしてます!これからも更新お願いします! (11月28日 2時) (レス) @page8 id: b6e7a94813 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2023年11月26日 11時