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少し前を歩いていた真希がぶっきらぼうに言う。
あらら、と照れくさそうに笑ったAは、ぺろりと舌を出して肩を竦めてみせた。
「で、A先輩は?陰陽師家……って言ってたよね。先輩も家への復讐的な?」
「そいつは真逆だよ」
野薔薇の問いかけに答えたのは真希だ。
どういうこと?と首を傾げる野薔薇に、真希は続ける。
「蕨美家は京都に伝わる伝統的な陰陽師の一族でな。『陰陽術』っつー術を使って生霊や悪霊を祓ってきたんだが、今のご時世、陰陽師として生きてるやつの方が少ない。っていうか、最近じゃその術を使える人間は極わずかなんだ」
そんな中、数十年ぶりに術を使える子供が生まれた。
それに加え、その子は僅かながらも、呪いを祓える呪力を持っていた。悪霊、生霊、妖怪、呪い…………この世に蔓延る人外、その全てを祓う力を持って生まれたのがAだという訳だ。
「蕨美家にとってAはこれまでにないほどの逸材。
ここまでできた人間は珍しく貴重だから、両親はAを外に出さず大事に大事に育ててきた」
「ああ、だからあの真依とかいうのは先輩のこと箱入りって言ってたのね」
「そういう事。外にもまるで出られず育ったからかビビりで泣き虫だし、ちょっとの怪我で大騒ぎするようなクソガキだった訳よ」
「そんな事言わんとってや酷い………………」
大切に想うばかりにずっと閉じ込めて育てたことが、まず間違いだった。その所為で出来上がったのは世間知らずの泣き虫弱虫なお姫様。Aが弱いから家は余計に過保護になり、その悪循環が続いて続いて、人と関わることもないような箱入り娘になってしまったという訳だ。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年2月12日 12時