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高校生2日目。
目が覚めて時計を見ると朝の5時前。慣れない場所で寝るのはなかなかに苦行で、“眠たいのに眠れない”をひたすら繰り返しながら夜中の2時過ぎまで起きていた。今もまだ眠いが、二度寝したら確実に寝坊する中途半端な時間なので仕方なく起きることにした。
「眠た……」
欠伸を噛み殺しながら洗面台へ行き、冷水で顔を洗うと些か目が覚めるようだ。カーテン越しには白い月がぼんやり見える。
「私ちゃんとやってけるかなぁ……」
呪術師になると強がって家を飛び出したはいいが、これまでに呪霊を祓った経験も、ましてや何かと戦った経験すらないA。引きこもりみたいな生活を送っていたせいで運動神経も乏しく、その僅かな運動能力は小学校3年から中学2年までやっていた剣道によるものである。
高専への入学が正式に決まり、陰陽術の使い方や呪力の込め方などを少しだけ練習してはきたが、それでも皆より何歩も後ろを歩いている事実に変わりはなかった。
「でも今更後戻りとかできひんし、やるって決めたんやからやるしかないよな」
不安とプレッシャーでキリキリ痛む脇腹を抑え、またもベッドに潜り込む。買ってもらったばかりのスマートフォンを開くと過保護な両親たちから大量の不在着信やメールが届いていて、思わず『通知をオフ』のボタンをタップした。
「……こんな時間から部屋乗り込んだら迷惑やわな。
こんまま横なってたら寝てまうし、1人で遊んどこ」
なんかないかな、と置いたばかりの抽斗を漁る。
花札、かるた、百人一首におはじき……。どれもこれも1人じゃつまらないものばかりで、Aはぷっと頬を膨らませて抽斗を閉めた。退屈で寂しくて、そしてつくづく思う。やっぱり呪術師って怖いなあ、と。
「ほんまに呪術師なんかなれんのかな」
今になってそんな不安が押し寄せて、小さな胸がきゅうっと苦しくなった。
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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時