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その後、病院に運ばれた真希も小学生も無事に一命を取り留め、Aと憂太は病室前でホッと一息ついていた。


(なんかすごい避けられてる気がする……っていうより怖がられてる?)


憂太とAは隣同士に座っているとはいえ、2人の間には1人分のスペースが空いている。完全に憂太を怖がるAは、彼と目が会う度に肩を揺らした。
……原因はいきなりおっかない呪霊にぶん殴られた事なのだが、その元凶なる憂太は訳もわからず「僕、嫌われてるのかな?」と勝手に落ち込んでいた。


「何かスッキリしない顔だね」


2人の間には不思議な空気が流れていて、そんな様子を黙って見ていた五条が口を開いた。暫くして自分に言われているのだと悟った憂太は、それに答えるように、開いた左手に視線を落とす。


「……初めて、自分から里香ちゃんを呼びました」


今まで里香が顕現したのは、憂太が誰かに虐められた時だけ。しかもそれは憂太の意思ではないし、今回のように憂太の「力を貸して」という言葉に応えてくれたのは初めてだった。

そんな憂太に「1歩前進だね」と五条は呑気に笑いを転がし、Aは何も言わずに俯いている。


「少し思い出したんです」


あの日、里香が指輪をくれた時の出来事が憂太の脳裏に浮かぶ。───よく晴れた、憂太の6度目の誕生日。
そこで結婚しようと約束し、憂太は里香に言った。


『じゃあ僕らはずっとずーっと一緒だね』


と。


「里香ちゃんが僕に呪いをかけたんじゃなくて、僕が里香ちゃんに呪いをかけたのかもしれません」


憂太がずっと一緒だと言ったから、だから里香は死んでも憂太の傍に居ようとした。愛していたが故に、その愛が『呪い』という糸で彼らを結んでしまった。そして互いを想う気持ちが強ければ強いほど、その糸は強く絡む。


「これは持論だけどね、愛ほど歪んだ呪いはないよ」


今回ばかりは五条のその言葉がまともに聞こえて、Aは肯定の意を示すように小さく頷いた。両親からの愛という名の鎖に繋がれ、自由を奪われたAだからこそ、その言葉の重みを痛いほど理解した。


「先生、蕨美さん…………」


そう言う憂太の瞳には、決意の炎が揺れている。
何のためにここに来たのか、何を叶えたくてここに来たのかという真希の声が過ぎって、憂太は強く息を吸い込んだ。


「僕は呪術高専で、里香ちゃんの呪いを解きます」


その声にはもう、迷いなどなかった。








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作者名:まめこ。 | 作成日時:2021年3月4日 15時

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