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｢死んじゃ嫌って………お姉ちゃん、死んじゃうの？｣
Aが消毒液で傷口を消毒するも、かけられた呪いが引いていく気配はない。ぐずぐずとしゃっくり上げながら傷の手当をするAの後ろで、子供が震えた声で憂太に言った。
｢ねえ、助けてよお兄ちゃんッ！｣
｢そんなこと言った、って…………｣
僕にはどうすることもできないよ、と言おうとした憂太の胸ぐらを、意地で起き上がった真希が掴む。
Aの手を借りて身体を起こすと、掴んだ服をぐいっと引き寄せた。
｢乙骨、お前マジで何しに来たんだ。呪術高専によ！
────何がしたい、何が欲しい、何を叶えたい！｣
それは、｢怖いものは怖い｣と言って逃げ出そうとした過去のAにも問うたこと。ゼェゼェと苦しそうな真希の必死の問いかけに、憂太は迷いながらも口を開いた。
｢僕は…………もう誰も傷つけたくなくて……。
閉じこもって消えようとしたんだ。でも、1人は寂しいって言われて、言い返せなかったんだ……｣
｢！｣
｢誰かと関わりたい、誰かに必要とされて……
──────生きてていいって、自信が欲しいんだ｣
あどけない瞳には一切の曇りもない。
生きている価値のない人間だと思い続けて消えようとして、それでも、心のどこかで“誰かにその価値を見出して貰いたい”と思っていた。揺るぎないその想いに、Aは言葉を失くして息を飲んだ。
｢じゃあ、祓え｣
憂太の胸ぐらを掴むその手には殆ど力がこもっていない。今にも意識を手放しそうな真希は、最後の力を振り絞って叫んだ。
｢呪いを祓って祓って祓いまくれ！自信も他人も、その後からついてくんだよ！
そう言って力尽きた真希の手は憂太から離れ、とうとう動かなくなった。
(僕は………──────)
憂太の首元に揺れるチェーンには、いつか大切な幼馴染から貰った指輪が通されている。目の前で気を失う真希と、そんな彼女に縋り付いて泣いているAを、飲み込まれた子供たちを助けなければ。
｢里香ちゃん｣
チェーンから力任せに外した指輪を左手の薬指に嵌め、そう呟く。『なぁに？』と頭の中で誰かが返事をした。
｢────────力を貸して｣
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作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月4日 15時
