□□□ ページ15
･
｢こんぶ？｣
ひょこっと顔を出したのは棘だ。その手にジョウロを持っていることから、花の水やりにでも来たのだろう。彼は座り込んでわんわん泣いているAを見て心配そうに首を傾げ、そして膝の傷を見て目を見開いた。
｢おおおおおおかか！おかかっ！｣
｢う…………狗巻くん？｣
棘はわたわたと慌てふためくと、ジョウロを放っぽってAに駆け寄った。
｢明太子？｣
｢さっきそこでコケてん。っ、痛い…………｣
傷口は浅いし、暫く絆創膏を貼っておけばすぐに治るくらいの程度なのだが、Aはいつまで経っても泣き止みそうにない。棘はあやす様にAの頭を撫で、｢高菜〜｣と優しく声をかける。まるで子守歌みたいだ。
｢ツナツナ｣
｢動かれへん、死ぬこれ絶対。折れた。｣
｢おかか…………｣
とりあえず傷口を洗いに行こう、と座り込むAに手を差し出すが、膝を曲げ伸ばしするだけでも痛いらしく、立ち上がろうと踏ん張るけれどすぐに地面に逆戻りしてしまった。
｢高菜ー………………｣
ぺたんと地面に尻もちをついて、それでも痛みにぎゅっと目を閉じて耐えながら立ち上がるA。
そしてそのままフリーズし、｢立てたけど痛いこれどうしよ｣とまた泣き出す。棘は少し考えて、何かを思いついたようにぽんっと右の握り拳を左手のひらに乗せた。
｢ん？｣
次の瞬間、何を思ったのか、棘はこちらに背を向けてしゃがんだ。突然の奇行にAはこてんと首を傾げる。
｢こんぶっ｣
｢ああ……………おんぶしてくれるん？｣
｢しゃけ｣
涙を拭いながら聞くと、棘は自慢げに頷く。
さあ早く乗れとでも言いたげに手招きしてくるもんだから、Aは渋々その背中を借りることにした。易々と背負われ、目線がいつもより数センチ高くなる。
｢お、重たいやろ私｣
｢おかか｣
｢そお？｣
｢ツナツナ｣
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 194人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：まめこ。
| 作成日時：2021年3月4日 15時
