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8:t ページ8

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『玉森くんっ!』



ある日、いつものように宮田と肩を並べて廊下を歩いていたら、後ろから不意に呼び止められた。


振り返れば見た事もない小柄の女子が、小走りで駆け寄ってきた。



『あのこれっ…家庭科の授業でクッキー焼いたんです。
良かったら食べてくださいっ!』




頬をほんのりと赤く染め、照れくさそうにクッキーの入った小袋を俺に手渡すと返事をする暇も与えてくれず、その子はすぐに走っていってしまった。




よく見ると小袋の中にはクッキーと、小さく折り畳まれた手紙が入っていた。




“明日の放課後 話したい事があります。
屋上で待ってます。 2年3組 〇〇 〇〇 ”



丁寧な字で書かれたメッセージとその子の名前。


今までロッカーにお菓子やら手紙やらを入れられた事はあるけれど、こうやって手渡しされたのは初めてだった。



『さっきの子誰?知り合い?』



いつもより少し低い声。

恐る恐る宮田の方を振り向けば、とびっきり不機嫌な顔をしている。


…久々に見たかも。宮田の拗ねた顔。

いつもはかっこよく決めてるのに、こういう時にだけ見せる幼い部分が俺は好きだ。



「んーん、知らない。てか面識ないのに話したい事って何だろーね。ごめんね宮田、明日の放課後一緒に帰れなくなっちゃった。」





俺の事で宮田が嫉妬してくれてる事が嬉しくて、
もっと意地悪したくなってしまう。


返ってくる言葉なんてわかっているのに。

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作者名:みやたま | 作成日時:2021年10月9日 1時

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