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「忘れろだとか、そんなこと貴方が言っては駄目だ!」


炭治郎は悲しそうにAにそう怒鳴った。「ああ、君はそういう奴だったな。人の為に怒れる子だった」とAはそんな炭治郎に優しい目を向けた。


目が覚めた炭治郎にAが言ったのは、さっきも言った通り、全て忘れてくれと一言。


「誰かの記憶に残れるような人間になりたいと言っていたのは貴方じゃないか!」


そんなことも言ったかな、とAは苦笑する。そう、それは確か彼らが入隊してすぐのこと。


何故そんなに良くしてくれるんですか、とAへ問いかけた炭治郎に紛れもないA自身が返した言葉だ。


誰かの記憶に残れるような人間になりたい。下心のある優しさだ。そうAは言った。


しかし炭治郎はそう口にしたAのどこか孤独な匂いをよく覚えている。彼は誰かに忘れられることを恐れ、そしてとても寂しがり屋なのだと思った。


「もう絶対に忘れません。今起きていることを全て教えてくれませんか。目を背けるのも、貴方だけに背負わせるのも嫌だ」


その目は真っ直ぐとAをとらえていた。「幸せを自分から捨てようとするなよ、炭治郎君。僕は君らが苦痛で顔を歪めるのを見たくない」Aはそんな炭治郎からズルくも目をそらした。


「幸せになるために言ってるんです。俺は、自分の幸せの為に動きます」


その言葉の重みはとても学生が口にしたものとは思えない。Aはキュッと胸が締め付けられた。


巻き込むのはもっとも恐れていたこと。けれどここで自分のエゴを炭治郎に押し付けてしまうのは気が引けた。


否、そんな美しい理由ではない。


どんなことを言われようともAは炭治郎を突き放すべきだ。そうしないのはAの甘え。


「いいのか、本当に。君がこの世で再び頑張る理由なんてのはないんだよ」


「罪のない人が犠牲になっていて、貴方が戦っている。それ以外に理由なんて必要ありません」


残酷なまでに竈門炭治郎という少年は善人であった。

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赫赫 - えっそこで更新停止…!?勿体ない……!!とても面白い作品です!更新して欲しいです! (2021年12月9日 7時) (レス) @page39 id: 33d74645c1 (このIDを非表示/違反報告)
10優 - すんごく面白いです!一瞬で文スト(鬼滅?)の世界に引き込まれちゃいました(笑)更新待ってます。頑張って下さい! (2019年12月4日 1時) (レス) id: 9d99cb2590 (このIDを非表示/違反報告)
六花 - あのお願いがあるのですが、逆崎君の詳しいプロフィールを教えてほしいです!無理ならば大丈夫ですよ。更新いつでもいいので頑張ってください! (2019年10月12日 19時) (レス) id: 1558ece2fb (このIDを非表示/違反報告)
える(プロフ) - ルルナナさん» ありがとうございます(*^^*)不定期な更新ですが、ぜひ逆崎君の物語にもうしばらくお付き合いください。コメントありがとうございました(*^^*) (2019年8月11日 0時) (レス) id: ace072b99e (このIDを非表示/違反報告)
ルルナナ(プロフ) - いつも更新楽しみにしてます!此れからも頑張ってください! (2019年8月10日 23時) (レス) id: f75b5a5c4e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:える | 作成日時:2019年5月25日 23時

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