25話 マーケットへ ページ25
ブチャラティさんはわざと私の前でスタンドを使ったのだ。ジッパーを使ってなんでも切断したり潜行したりできるらしい。
信用しているから、という言葉に心臓が掴まれるような感覚がする。私はまだ誰からも信用を得ていないものだと思っていたから、余計に高鳴る。
「じゃ、いってくる。」
「あ、いってらっしゃい…ませ」
「はは、そう堅苦しくなるな」
そうブチャラティさんは笑って男が詰まったスーツケースを手に取り、そのままアジトを後にした。
「Aってブチャラティに惚れてんのか?」
ブチャラティさんが去った後のドアを見つめていると、後ろから声が飛ぶ。
「そ、んなわけ!というか目覚めたのなら準備してくださいよ!」
「あーうん。するけどさ、ブチャラティは良いヒトだしものすごく尊敬してるけど、それが目的でチームに入ったんならすげー怒ると思うぜ」
ナランチャは既にパニーニを食べ切って頭にバンダナを取り付けている。
私は決してそんな不浄な理由で加入した訳じゃない。でもそんなことを疑われるのは信用されていないからなのだ。思わず拳に力を入れてしまう。
「私はそんな生半可な気持ちで入ったワケじゃありません。あなただってブチャラティさんの人間性には惚れてるんでしょ?」
私がそういうとナランチャは顔を上げて目を丸くする。
「わかる!わかるぜ!そうだよな!やっぱり!オレと同じ!変なこといってごめんな」
「え、あ、はい。気にしません」
ナランチャもブチャラティさんの人間性に惹かれているらしい。彼がこのチームに入ったのもそういう事なのだろうか。態度が一変した。
少し単純すぎるような気もするが。
「それで…お使いを一緒に行かなきゃならないんですけど、話は聞いてました?」
「ンーなんとなく?でもお使いなんて一人でもいいのになぁ」
「確かに…」
ブチャラティさんのことである。きっとどちらかの心配をしての事だろう。多分私の足のことを気にしてくれている、申し訳ないという気持ちもあるが、流石だという方が先行した。
「ま、とりあえずさっさと終わらせましょうよ」
「そーだな!って、なんでお使いに行くんだっけ…」
「ブチャラティさんに頼まれたからですよ…聞いてたって言ってたじゃあないですか」
前言撤回である。きっと私の足のというよりはナランチャの方を心配している。それがなんとなく私にも理解出来た。
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作者名:invisible Comet | 作成日時:2019年4月8日 16時