唐突なシリアス(苦手なのになぜか書きたくなる) ページ19
Side Unknown
「深海くんや」
「…れい〜」
「あまりそうしておると風邪をひいてしまうぞい、程々にの」
「だいじょうぶですよ〜」
ずぶ濡れになっている旧友が言っても聞かないことはわかっていた。意外と頑固なのだ、彼は。零は「そうかい」と苦笑して噴水の縁に腰掛けた。
「時に、モデルの依頼を断ったそうじゃな」
「…きいたんですか？」
「この学院に我輩の知らぬ事など無いわ」
零はくつくつと楽しげに笑って、視線を空にやった。まだ日が高く、自分が行動するにはまるで適していない。優しい風がふわりと頬を撫でた。
ああ、もうすぐ夏がやってくる。
「君も、Aが嫌いなわけではなかろう」
「…『きらい』とか『すき』とかではないです。そういう『ものさし』ではかれるものではありませんよ、あれは」
「言えておる」
「今のあるとが『ちゅうけん』じゃないことはしってます。でも、『しごと』をしているときの『め』は『ちゅうけん』をおもいだして『いや』です」
「それは我輩も時々感じるぞい……というか、あの頃のAを知る者は皆そうじゃろうな」
皇帝のお気に召すまま、言われた通りに忠実に仕事をこなす彼女は、確かに"忠犬"であった。どんな残虐な行為も、自分を犠牲にしてでも、ケラケラと笑ってそれを実行していた。
皇帝が自分の全てであるかのように、忠実な犬となって。ボロボロになってしまった心を、『皇帝への忠義』と『皇帝からの愛』で隠し続けて。
「彼女も、ある意味では被害者だったのかもしれん」
「それは、そうかもしれませんけど」
「もちろん、Aのした事は到底許されるべき行為ではない」
彼女への警戒を解く必要はない。恨みを忘れ去るなんてことはできるはすがない。
それでも、
「Aを信じてやってはくれぬか」
それはまるで、自分に向けて言っているようだと零は呆れに近い自嘲の笑みを浮かべた。
──誰よりも彼女を信じてやれていないのは、自分だというのに。
今年こそは、彼女と腹を割って話してみようか。昔のことは互いに触れたくないけれど、彼女を信じるためには、そして彼女に信じてもらうためにはそうする他ない。
零は視線を空にやって、その眩しさに目を細めた。
ああ、もうすぐ夏がやってくる。
少しだけ、胸騒ぎがした。
番外編 質問などなど受け付けます→←思春期か？？そうなんだな？？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 277人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「あんスタ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
内海祝孤(プロフ) - 面白いです！一気に読んじゃいました笑笑 続編のパスワード教えて欲しいです (2021年9月20日 9時) (
レス) id: bdacf1d86f (このIDを非表示/違反報告)
絵描き隊(描かないけど下手やから) - す、すごく言いづらいです…私、ジュンくんと誕生日一緒です！ (2020年8月19日 23時) (レス) id: d0f29aa6bd (このIDを非表示/違反報告)
紅 - いつも、楽しく読んでます！あるとちゃんに質問です。英智くんと敬人くん以外で、一番仲のいい人は？ (2020年2月16日 5時) (レス) id: f780153d26 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：鈴菜+ | 作成日時：2019年4月1日 1時
