240メートルの誤算5【佐野玲於】

ブーケ ページ45

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CM撮影のスタジオに入った。
控室にはすでに、着替えを終えたメンバーの姿。


「お疲れ！」
「早かったね。」
「うん、めっちゃ早く終わった。」
「着替えり、セット終わったら打ち合わせやって。」


わかったって返事して、更衣室に入った。
着替えてヘアセットしてもらって
終わったところでちょうど、控室に監督が入ってきた。
みんなで挨拶して、撮影の流れを聞く。


「……というコンセプトになってます。背景はすべて合成になりますので。最後に7人集まって頂いて、台詞をお願いする形になりますね。タイミングなどは随時確認していきます。」


わかりましたってレジュメを見ながら頷いた。
ひとりずつの撮影だから
まずは、俺と亜嵐くんだけスタジオに移動。
そこでも詳しく説明を受けながら、グリーンバックの前で撮影を進めていった。



「個人での撮影は以上となります。控室でお待ち下さい。」


カットがかかったあと、可愛い女の子にそう言われた。
大勢のスタッフさんに頭を下げる。
控室に戻り、他のメンバーの撮影が終わるまで ソファーで仮眠をとった。
最近全然睡眠時間とれてなかったな。
昨日も夜中まで撮影あったし。

目を瞑ったら一瞬で眠りに落ちて
ずっと、夢を見ていた。
なんの夢だったか、目が覚めたときには忘れてしまってて
でも多分、幸せな夢だった。



「佐野さんスタジオに移動お願いします。」


さっきの可愛い子
俺を呼びにきてくれて、急いでスタジオに向かう。
あくびを噛み殺した。
もう23時か。
頑張れ頑張れ、もうちょっとだ。
今日はクリスマスだし、帰りにコンビニのケーキでも買って帰ろう。

そんなこと考えながら、メンバー全員での撮影を進める。
涼太くんがスマホをカメラに向けたあと、全員で台詞。
特に問題なく進み、30分後にはカットが掛かった。

奥でマネージャーがにやにやしてる。
早く帰りたくて仕方なさそう。
いいな、彼女に会うのか 今から。



「撮影は以上となります、お疲れ様でした！」


スタッフさんのそんな声。
ありがとうございましたって頭下げる俺らに、ひとりひとつずつブーケが贈られた。


「お疲れさまでした。」
「ありがとうございます。」


手渡されるブーケ
お礼を言いながら受け取り、顔を上げる。
交わる視線

その、先にいたのは


「……え…」
「……お疲れさま、玲於くん。」


ありえない。そんなわけない。
でも、人違いなんかじゃない。

ああなんで
なんでここに、Aがいるんだよ。


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