やめれば？ ページ22
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20時をすぎて、タクシーを降りた。
アパートの階段を一段飛ばしで登る。
角部屋のドアの前
ポケットから鍵を取り出していたら
突然ドアが開いた。
驚く俺の前に立ち尽くすのは、目腫らしたAの姿。
メイクもなんもしてなくて、服はパジャマのまま。
「……おそいよ…」
「……階段、一段飛ばしで来たのに。」
「…でも、おそいよ…」
言いながら、俺にしがみつく。
慌ててドアを閉めた。
「A、ごめんって。…てかお前大丈夫？」
大丈夫なわけないことは、俺が一番分かってたけど
この状況を待ち望んでたなんて
Aには知られたくなくて。
「……あの子に会ってたの？…今まで、ほんとに仕事だった？」
「いや…約束したじゃん。もう会わないって。」
「ほんとなの。」
「…ほんとだってば。」
言いながら抱きしめると、昨日より、身体が小さくなってる気がした。
このまま無くなりそうだ。
力込めたら折れそうで、潰れそうで
「……リビングいこ。」
「……。」
「……ね。」
力なく頷いたAは、俺の一歩後ろをあるいてく。
途中見えた洗面所
昨日の洗濯物が置かれたまま。
「ねえ、今日お前仕事は？」
「…休んだ。」
「休んだ？」
「……体調悪くて休んだ。」
「…どう悪いの。」
「……頭痛い。」
「……。」
「……ほんとだよ。」
目、腫れてる。
俺が仕事行ってからも、泣いたのかな。
泣いてたらいいな。
「……やめれば？」
「…え？」
「……スーパーも、この前言ってた広告会社のやつも…やめれば。」
「……。」
「……てか、やめろよ。」
「……やめる…？」
「……ずっと家いていいよ。俺が代わりに働くから。」
「……。」
「……俺んちにいればいい。」
弱ったAを見ていたら
驚くほど素直に 本音が出てきた。
Aは真ん丸な目で俺を見上げながら、ぽかん、て 何がなんだかわかってないみたい。
「……わかる？」
「…わかんない…」
「……俺が好きなんでしょ。」
「…大好きだよ。」
「……だったら、ずっと俺んちにいていいよ。」
「……ずっとって？」
「死ぬまで、いいよ。」
「……。」
「……俺といたいんじゃないの。」
「…いたい。」
「…だったら来て。」
Aは不安そうな顔をしながら、小さく頷いた。
俺の言うこと、なんでも聞く。
俺がこいつから色んなもの奪ったから
Aはもう、俺がいないと生きられない。
今度こそ自惚れじゃなく、多分もう、別れられないんだよ。俺たちは。
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a - もう何回読んだか分かりません。当時GENEが大好きだった私も今では予定があえばライブに行く程度ですが、未だに何回もきなこさんの作品を読んでしまいます。こんなに大好きだと思える作品は他にありません。当時も今も変わらずいちばん大切な作品です。 (11月26日 9時) (
レス) @page50 id: fb27f2c91a (このIDを非表示/違反報告)
また会いたいです - きなこさんは今は何をされていますか？ (9月26日 19時) (レス) id: e10e58a731 (このIDを非表示/違反報告)
mchar(プロフ) - もう3回くらい読んでます。毎回泣いてしまうし、寝る間も惜しんで読んでしまいます。もう玲於のファンは卒業していますが、きなこさんが書く玲於が好きです。 (7月3日 8時) (レス) @page50 id: 895ee9ba7d (このIDを非表示/違反報告)
ナカム(プロフ) - 後半は特に心がギュッと掴まれて苦しくなっちゃうくらい感情移入してしまいました、、素敵な作品をありがとうございます！！2人の会話のテンポ感と雰囲気がすごく好きでした！！！ (7月3日 2時) (レス) id: a627fc4932 (このIDを非表示/違反報告)
まるこめちーは(プロフ) - やっぱ玲於……カッコイイーーー！！！！！と思いました！笑 長々と失礼いたしました。 (2023年1月27日 19時) (レス) id: 58d12bf03b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きなこ
| 作成日時：2019年12月1日 22時
