240メートルの誤算4【佐野玲於】

仕方ない ページ8

.



それからさくらちゃんとは、暇な時にラインを送り合うような仲になった。
中身は全部愚痴とか悪口とか、ほんと人には見せられないようなのばっかだけど。

気持ちが軽くなる。
落ち込んでるときに、ほぼ八つ当たりでうぜえって3文字だけ送っても、ほんとそれな！って返ってくるし。
笑っちゃうわ
この子絶対友達多いタイプ。



「どうなった？さくらちゃん。」

楽屋でヘアセット中。
龍友くんがそう声をかけてきた。

「あー、なんか仲良くなった。」
「マジ！？」
「うん。てか龍友くん知ってた？あの子彼氏いるって。」
「あそうなんや。知らんかった。誰やろ？芸能人やで絶対。」
「…マジ？」

誰？って、ふたりで首を捻る。

「仲良くなったんやったら、また飲みいく？」
「行ってもいいけど。」
「俺カナちゃん狙ってんねんて。協力してやあ〜」
「あー…そういうこと。」
「カナちゃんとさくらちゃん仲良いからさ。」

そういえば俺は、さくらちゃんの年齢も、どこに住んでるのかも、仕事も、何も知らない。
カナちゃんって子のことは、正直あんま覚えてないし。

「じゃあ決めとくから！頼むわ！」
「はいはい。」

…何を頼まれたかは、大体わかる。




4人でご飯行く日は、それから1週間後に決まった。
その日は朝からずっとメンバー全員でのロケで
19時過ぎに終わって、ちょうどマネージャーが送ってくれるっていうから、お言葉に甘えて車に乗り込んだ。

「えー、女の子もいるんすかあ。俺もいきたいっす。」
「ふは、うける。」
「来たらええやん！あ、けどカナちゃんはあかんで、俺の！」
「カナちゃん…名前から可愛いっすね。」

秋から担当になったこのマネージャーは
俺らと同年代だし、なんか面白いし、仲が良い。

「えーけど玲於さん彼女いませんでした？」
「別れたわバカ。」
「え？マジっすか？」
「もう1ヶ月くらいなるんちゃう？」
「1ヶ月は過ぎた。」
「そうやんなあ。浮気やで、浮気が原因！」
「え、浮気？可愛いんすか？」
「うん。」

写真見せて！って騒ぎ出したマネージャー
龍友くんも、ええやん見したったら、なんて言うから、結局俺が折れた。
信号でとまったとき、写真見せてあげる。一瞬だけ。

「あー可愛いっすね、庶民感あって。」
「は？」
「いやなんていうか、純粋そう。これはモテますわ…浮気も仕方ない。」

…仕方ない、かあ。
俺からしたら、そんな簡単に片付けられる話じゃないんだけど。

.

飲みなおし→←救われた

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す