240メートルの誤算4【佐野玲於】

自由の女神 ページ43

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次の日
晴天に恵まれて、朝っぱらからMV撮影の準備。
監督からの指示を受け、何度もチェックして
映像確認しながらメンバーとも話し合い
集中していたら、時間は驚くほどに早く過ぎる。

メンバーみんな、自由時間確保のために必死。
でももちろん妥協するわけにはいかないから
これ以上ないほどの集中力を見せた。


昼、ちょっとだけ休憩貰えて
メンバーと近くの店に昼食がてら入る。
アメリカンサイズのバーガー片手に、話し合い。


「この調子やと予定より早く終われそうやな。」
「うん、監督の機嫌もいいし。」
「それ思った〜」
「めっちゃ行きたい古着屋さんあるからがんばろ。」
「玲於、美術館一緒来るでしょ？」


涼太くんにそう聞かれる。
うん、って頷く直前、また思い出した。
Aのこと。
自由の女神
…自由の女神


「……ごめんやっぱそれナシでいい？」
「え？いいけど…」
「マジでごめん。」


我ながらほんとに、頭が悪いと思う。
行ってどうなる？
思うのに、どうしても止められない。



結局本当に撮影は早く終わって
16時前にはホテルに戻れた。
急いで準備し、部屋飛び出て地下鉄に乗り込む。
フェリー、予約できるか？
当日ってどうなんだ。
色々考える。

終点で降り、公園沿いの道を急ぎ足で歩いた。
リバティ島へのフェリー乗り場について
拙い英語で、最終便のチケットを買う。
当然王冠や台座へ上がれるチケットは完売だった。
でもいいや、下から眺めるだけで十分。

その後、セキュリティチェックの列に並び
日本人観光客の姿にビクビクしながら、やっとの思いでフェリーに乗り込む。
もう暗くなってきてしまった。

リバティクルーズ
デッキに出て、ぼおっと景色を眺める。
マンハッタンのビル群
風になびく国旗
潮の匂いと、そして、だんだんとはっきり見えてくる
自由の女神


上陸し、近付いた。

夕陽に照らされた自由の女神は、穏やかで、優しかった。
…大きいな
なんか、すげえ綺麗
ずっと見ていたくなるような
思わず安心してしまうような

Aに似てる
と、そう思った。

自由の女神は、Aに似てる。
NYの小さな島に、こうして凛と立っていて
不思議と吸い寄せられる。
離れたくないと思わせる。


暫くただじっと眺めて、その後、閉館時刻が迫ったミュージアムに入った。
そこで知った事実
自由の女神、93メートルだって。
前Aに、東京タワーよりデカいんじゃね、とか言ったのに。

…今何してっかな
一緒に見たかったなあ


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