240メートルの誤算4【佐野玲於】

悪い予感 ページ13

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それからの毎日
ほぼ毎日のラインと、週一くらいの電話
そして2週間に一度くらいのメシ。
相手は、さくらちゃん。

なんかもう、めちゃくちゃ前からの友だちみたいな空気感で
一緒にいたら楽だし、悩みも吹っ飛んでく。


バレンタインはチョコくれたんだよ
手作りの。
食べるの勿体ないくらい綺麗だった。

ホワイトデーは俺もお返しした。
ちゃんと、高いやつ。
分かんなかったから、涼太くんにどれがいいと思う？ってわざわざ聞いたし。
めっちゃ喜んでたな。
彼氏に貰ったのより美味しい！とか言ってて
それ見て、俺まで嬉しくなった。




「玲於さん、次の現場ちょっと遠いんで寝ててください。」

iPad見ながら、マネージャーがそう言った。
単独の仕事。
台本はもう穴が開くほど見たし、わかったって返事して、イヤホンをした。

何聴こうかなってスマホを触る。
音楽再生し始めてから、最後にライン開いた。
…あれ、さくらちゃんから返事きてないな。
珍し、わりとレス早い方なのに。

ちなみにさくらちゃんは、某有名百貨店の一階でビューティーアドバイザーとして働いてる。
たまに化粧濃いときあって面白い。
今日忙しいのかな。
朝起きてすぐ返したラインに、まだ既読もついてない。


スマホ置いて、目を閉じた。
今日は3月30日
もうすぐ4月か。
…時間が経つのって早いなあ、ほんと。

2時間かけて到着した現場。
息の詰まるような撮影が続く。
ようやく今日のぶんを撮り終えたときには、もう23時を過ぎていた。
明日も朝から都内のスタジオで撮影あるし
それ終わったらまたここに戻ってきて…

つかれた、って、呟きそうになって
慌てて口を閉じる。
こんなとこで弱音吐いてられないな。
俺なんかよりもっと頑張ってる人は山ほどいる。

帰りの車の中
やっぱりラインは返ってきてなかった。
…変だな
…なんか、あった？




悪い予感というものは、大抵当たってしまうもので。
おつかれしたって降りた車。
裏口からマンションに入り、エレベーターで上がる。
あくびしながら降りて通路を曲がったとき

俺の部屋の玄関の前
誰かが、しゃがみ込んでた。

足を止めて、キャップをさらに深く被る。
…女の子だ。
え、なに…ファン？え？
超ビビりながら、近寄る。
思い切って声をかけた。

「…あの、」

女の子は俺の声に、そっと顔を上げて

「……玲於くん、」
「…さくらちゃん…？」

憔悴しきった様子の彼女は、ごめんね、と、小さく笑った。


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