240メートルの誤算4【佐野玲於】

同い年 ページ10

.



コンビニで調達した酒とつまみ。
この前と同じ流れ。
彼氏と鉢合わせないようにって、急ぎ足で俺の部屋入った。

「ふぅー、なんか怖い！寿命縮みそう。」
「まあいいじゃん悪いことしてるわけじゃないし。」
「え？悪いことだよ。」
「なんで？俺ら友だち…」
「友だちでもダメじゃない。こんな時間から男の子の部屋に来たら。」

……そっか
そりゃそうだよな
俺もAがこんなことしてたら怒るどころじゃ済まねえ。

「まあ乾杯しよ、とりあえず。」
「うん、玲於くんどれ飲む？」
「えっとねー…」

ソファーにふたりで座って、さっきの続き。
飲みながら適当な話する。
さくらちゃんと2人になると、どうしても恋愛話をしがちだけど。

「つーかさ、めっちゃ気になるから聞いてもいい？」
「え？」
「彼氏って、ここ住んでんだよね？もしかして芸能人？」
「あー、うん。俳優。」
「えマジ？誰？」
「…もし現場で会っても知らん顔できる？」
「できるできる。」
「ナオくん。」
「え、うっそ凄くね？」
「うーん、凄いのかなあ。」

想像以上
正直無名の俳優とかかと思ってたから、度肝抜かれた。
まあかわいいもんなあ。

「どうやって知り合ったの、それ。」
「えっとね、まあ、前から芸能人とか芸人さんとわりと繋がりはあったんだけど、」
「そこがまず意味わかんないけどね。」
「あは、まあ置いといて。で、芸人のね、まあちょっと有名なひとと仲良くなってご飯いってたら、たまたまナオくんが同じお店にきたの。」
「へぇー…」
「そこで話して連絡先交換して…って感じ。普通だね、つまんない出会い方した。」

…つまんない？
俺からしたら、全然良いけど。

「つかさ、さくらちゃんって何歳？」
「24だよ。」
「…何年生まれ？」
「95年、5月。」
「あ、同学年じゃん。」
「知ってるよ！笑」
「あ知ってた？」
「龍友くんと友達だし、わたし。さすがにちょっとは詳しいよ、ジェネ。」

…同い年か。
Aも一緒なんだよ。
そっか、さくらちゃんとAって、同い年…
なんか全然そう見えないな。
Aのほうが下に見える。
あいつはほんと、子どもっぽいから。
顔も幼いし、中身だって全然。だから俺が隣にいてやらなきゃいけなかったのに。

「…大丈夫？」
「…うん。」
「また元カノ思い出してたでしょー。すぐわかるよ！」
「…うるさい。」
「はい、ほら飲んで。忘れよう。」


さくらちゃんの言葉に頼るしかなかった。
本当は、忘れたくなんてなかったのに。

.

何もできない→←飲みなおし

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す