240メートルの誤算4【佐野玲於】

変わらない ページ45

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次の日
ロケを無事終えて、日本に戻る飛行機に乗り込んだ。
自由の女神のオブジェ
なんか離れたくなくて、機内に持ち込む。

Wi-Fi繋いで、ライン開いた。
探すのは、さくらちゃんの名前。


[ 話したい。来れる？ ]


すぐに既読がついて、わかったって返ってきた。
向こう着くのは午前中で、その後一個だけ仕事あるけど、すぐ終わる。
ちゃんと話さなきゃいけない。
俺が思ってること、思ってたこと、全部。

長いフライトの間
この4ヶ月間のことをずっと思い出していた。
正直今だって、よく分かんないことだらけで
楽な方に逃げたいし
一生、フラフラしたまま生きてたいとも思う。

でもそれじゃ、俺の中の一番大事なところが納得しないんだよ。
今までの人生、間違えた選択に後悔することばかりだったけど
それでもなんとなく、上手くやってこれた。
でもAのことだけは
この先何年経っても、たぶん、浄化できない。


…なんて、カッコつけたこと言ってるけど



「いい？絶対ジロジロ見んなよ。水買ってすぐ帰ってこい。」
「わかりました！」


帰国後、13時すぎ
撮影の合間にマネージャー引き連れて、タクシーでAが働いてるスーパーへ。
この前北山が、Aは夜入ってないって言ってたし
昼間のこの時間に、今日、Aが外に出ていることを確認したかった。


俺は駐車場で待機。
タクシーの車内でそわそわしながら待ってたら
マネージャー、ありえないほどの猛ダッシュで帰ってきた。


「玲於さん、」
「いやいや息切れしてんじゃん嘘でしょ。」
「や、それが、」
「なにちょっと落ち着いて…」
「店、入ってすぐに元カノさんと目合っちゃって…俺焦って、水…」


言いながら手渡された
レモンの炭酸水。
…いやまあ、べつになんでもいいんだけどさ…


「大丈夫だって、Aお前の顔知らないし。」
「そうっすけど。」
「とりあえずいたのね、今、A。」
「はい、それはもうバッチリ確認済みです。」


それが分かればいい。
運転手さんに、Aんちの住所を告げた。
懐かしい街並み。
思わずぼおっと、外を眺める。
Aんちに行くとき、たまに歩いて行ってた。
そのとき通ってた道だから
なんか、感慨深くなっちゃって。

この4ヶ月で、変わったものもあるけど
変わらないもののほうが、ずっと多い。
それに気付けただけで、多分俺は成長してる。



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