過去の話 ページ32
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それから一個一個
付き合う前のこととか、付き合い初めてすぐのこととか
ほんとに一番幸せだった頃のこと、話した。
話してる途中、少し声が震えて
もうやめようって言ったけど、さくらちゃんが、この先のことが知りたいって言うから。
「…だから、俺はさ、Aのために頑張ってたんだよ、ほんとに。ほんとにそれだけ。Aって弱虫で、俺がいないとピーピー泣くようなやつだったから。」
「…うん。」
「仕事とかトレーニングとか、結局全部Aのため。てか、Aがいたから、頑張ろって思えてた。もっとデカくなってさ、…Aにとって良い男でいたかった。」
でも、と、続ける。
「……付き合いはじめて1年くらい。Aの様子がおかしくて、どうかしたのって聞いたら、あいつすげー泣いちゃって。その時初めて言われた。俺の仕事が嫌いだって。」
「…仕事が嫌い?」
「うん。仕事してる俺が、嫌いだったんだって。」
「……。」
「…ドン底に落とされた気分だった。…思い出したくねえ、ほんと。」
Aのためだと思って必死こいてやってきたことが
実際は全部、ただ苦しめていただけだった。
でももう後には引けないし
仕事を捨てるわけにもいかないし
苦しんでるAに、何もしてあげられない。
俺じゃダメなのか、なんて考えたのも、その時が最初。
「それからまた日が経って、A、同じ大学のやつとさ、…」
「……浮気したの。」
「……結局俺、何も知らないけどね。吉川くんって呼んでた。電話とかラインとか、飯行ったりもしてて。手繋がれたって。ほんとにそれだけで終わったかは知らない。」
「…そっか。」
「それでそのとき、なんか全部言われちゃってさ。…俺が出会った時と全然違うとか、大人になってるとか、…別れたいとか。ほんと、全部言われた。」
話すたびにどんどん気持ちが落ちていって
でも、さくらちゃんは相変わらず、真剣な顔で相槌を打ってくれてた。
別れたいって言葉を受け入れなかったこと
吉川くんの存在がトラウマになったこと
好かれてなくても一緒に居たかったこと
最近のことまで全部話し終えてようやく顔を上げたら、もう1時間も経ってしまってた。
「ごめん、長くなりすぎた。」
「…ううん。知れてよかった。」
「……。」
「…玲於くんあのさ、…わたし、思うんだけど…」
「……ん?」
「…Aちゃんは、玲於くんのこと、ずっと好きだったんじゃないかな。」
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きなこ(プロフ) - とっぽさん» お返事遅くなってごめんなさい!直近で言うと、ただいま初恋5「どうしよう」のページで、軽井沢でふたりで撮った写真とか、得意げなあの顔のイメージでした(^ ^) (2019年12月24日 13時) (レス) id: 1d09c43b5e (このIDを非表示/違反報告)
舞華(プロフ) - きなこさん!!!!私初めてワンミリのMV見たとき、それこそあの携帯見てるシーン見たとき、占ツク感が凄いって思いました本当に!!やっぱりきなこさんのお話読んでたからそう思ったんだと思いますそしてあれは実際にやってますね!笑笑きなこさんのお話ダイスキです! (2019年12月24日 13時) (レス) id: 689ff0d5f6 (このIDを非表示/違反報告)
とっぽ - 眉毛をちょっと上にあげて…という台詞は何のお話に出てくるのでしょうか…(;_;)教えてくださるとありがたいですm(_ _)m (2019年12月2日 21時) (レス) id: 3d038c663d (このIDを非表示/違反報告)
ゆいあ - きなこさん、最高です!!玲於くんの顔を想像しながら読んでいて、いつもドキドキです。今月のviviの雑誌の玲於くんもすごくかっこよかったですよ!よかったら見てみて下さい!!それから話おもろしかったですよ!ぐだぐだじゃないです!!更新待ってます。 (2019年12月1日 21時) (レス) id: a624d1b453 (このIDを非表示/違反報告)
ライ千(プロフ) - きなこさん、いつも楽しみに読ませて頂いてます。私もワンミリのMVを見た時、Mステで踊ってる玲於くんを見た時、あぁ、このお話に出てくる玲於くんだ....と思いながら一人でキュンキュンしてました(笑) (2019年12月1日 1時) (レス) id: a6fe8073c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きなこ | 作成日時:2019年11月3日 22時