240メートルの誤算3【佐野玲於】

自業自得 ページ32

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その日の夜は、体調と機嫌の悪さを忘れるくらい
飲んで、遊んで。
着いたのがすでに18時とかだったけど、朝になるまでとにかく遊びまわった。

友達の計らいで大好きなコレオグラファーと会えたり、そこで色んな話できたり
とにかく実りある休日。
英語、まだ全然下手だけど勉強しといてよかった。

Aと泊まる予定だったホテルは
まあ、なかなか良い値段だったから当たり前だけど、かなり綺麗で。
なんでこんな部屋にメンディーと寝なきゃなんないんだよ、なんて、自業自得のくせに考える。(ダブルベッドだし)

ベッドに寝転び、天井を見上げた。
…あー、やっぱ一緒に来たかったな。
一緒に旅行いきたいって気持ちももちろんだけど
なんつーかこう
ここって、俺にとって大事な場所だし
俺が尊敬する人とか、友だちも沢山いて

そういう場所に、Aを連れてきたかった。
見てほしかった。
…なんだろうな。この感じ。

今日に限ったことじゃない。
ステージからの景色や熱気
深夜からの撮影で見えた朝日
クランクアップの時にもらった花束
先輩に連れてきてもらった店
メンバーと笑い合う楽屋の空気

俺がひとりで見てしまっている、全部を
Aにも分けてやりたい。
いつもそう思ってた。

芸能人の俺が嫌いなAには
きっとこんなの迷惑なんだろうな。




頭が痛くて、昼間まで眠ってた。
メンさんに起こされて、シャワー浴びて準備し、部屋を出る。
昔から仲良い友だちケント、それから昨日バーで出会って知り合ったやつらとまた合流して、一緒に昼飯食べに行った。
相変わらずのジャンクフード。
嫌いじゃないけど、いちいち全部デカくてびびる。

「玲於たち、あんな良いホテル泊まってたのか。さすがエンターテイナーだな。」

カタカナの部分だけめちゃくちゃネイティブな発音。
正直に話した。

「…ほんとは彼女と来る予定だったから。」
「そうなの！？」
「うん。仕事だって断られた。」
「会いたかったなあ。玲於のガールフレンド。」

ちなみにケントには、アメリカ人の超グラマーでイカした彼女がいる。
もうずっとこっちに住んでるから、日本人女性じゃ物足りなくなったらしい。
贅沢者め。

そのあと、またメンディーが余計なこと言った。
俺と彼女がうまくいってないって。
いちいち言うなってキレたら、第三者の意見はたくさん聞いたほうがいいとか説教ぽく言ってくるし。

どうせまた、別れたほうがいいって言われるのがオチなのにさ。


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