240メートルの誤算3【佐野玲於】

景色 ページ31

.


「ほんとに別れんの？」
「……。」
「昨日女の子に言われてたじゃん。」
「……別れるわけないし。いまさら。」
「ふは、やっぱ嘘だったんだあれ。」
「こっちはさ、Aと4年も一緒にいんの。あんな昨日初めて会った子に別れろとか言われたくない、マジで。」
「あ、そうそうAちゃんだ。てか勘違いだったらあれだけど、俺会ったことあるよね？めっちゃ前に。」

…墓穴。
メンさんを睨むと、やっぱあのときの子か！って笑ってる。
いいよ、べつにもう。
Aメンさんのこと、助っ人外国人選手とか言ってたし。

ため息つきながら、窓の外を眺めた。
…綺麗だな、街並み。
日本とは全然違う。

「でもAちゃんには別れたいって言われてんでしょ。」
「…2年前に浮気されて、それ以来ずっと。」
「えー、そんときの男とまだ繋がってんじゃない？」
「え、やっぱそう思う？」
「だってAちゃんは別れたいって言ってるわけじゃん。玲於が返事誤魔化してるだけで。」
「……。」
「…まあ、文句は言えないよね。」

…今でもあの、吉川くんと…って
考えただけで、頭がおかしくなりそうだった。
Aと手繋いだ、あいつ。
Aを居酒屋に連れてった、あいつ。

顔も知らない相手だけど
俺にとっては十分すぎるトラウマ。…もう無理なんだよ、マジで。

やっぱあの折り畳み傘、吉川くんのなのかな。
今でも連絡取ってたりする？
あいつ俺の前じゃ滅多に携帯触んないけど、もしかして、隠れてこっそり。


「…ちょ、LA来てまで彼女のことで落ち込むのやめてもらえます？笑」
「…ほんとにやばいんだって。」

合鍵返せって言われたらどうしよう、とか
マジで女々しすぎる、俺。

もう放っときゃいいのに
でも、放っといてつらくなんのは俺だし。
こんなに遠い場所にいるのに、違う景色を見てんのに、俺の頭の中は結局、あのアパートにいるときと何も変わらない。


いっそ俺が浮気でもしてやろうか。なんて自暴自棄になったことだって、もちろん今が初めてじゃないけど
何をしたって、自分で自分の首を絞めるだけ。


「…けどさ、正直俺も話聞いてる限り、別れてもいいんじゃないかとは思うよ。玲於らしくないっていうか。もっと玲於を高められる子はいると思う。」
「……うるさいっすよ、マジで。」


こんなに、こんなに言われてもまだ
俺はこの綺麗な景色を、Aにも見せてやりたい。
バカなんだよ。
どうしようもなく。


.

自業自得→←そういうとこ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す