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それだけ ページ33

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「ごめん、玲於くんご飯食べてくるかと思って、あんまり良いもの買ってきてない。」
「いいよ、ってか、いつものことじゃん。」
「…ズボラ飯って言う?」
「言わない。言ったら怒られるから。」

そう言って少し笑ったあと
ゲーム置いて、キッチンにいるわたしのとこに来た玲於くん。
頭から必死に淳平くんのことを追い出す。

べつに悪いことじゃないはずだよ。
ただ、よく行く古本屋さんで働いてるひとで
うちのお店で旅行の予約してて
ばったり会って、少し、仲良くなって
今日傘貸してくれて
それだけ。ほんとにそれだけ。


「何作んの?」
「…野菜炒め。」
「ふうん。」
「……向こうで待ってていいよ。」
「うん。」
「……。」
「……久しぶりに会えたってのに、かわいげがないヤツ。」

そんな言葉に、え、って固まる。
そうだ
わたし、あんなに玲於くんに会いたかったのに。

「3年前のお前なら、たぶん飛びついてたよ。」
「…そうかな。」
「うん。だって、思い出してみ。夜中に電話してさ、会いたいよーって泣きべそかいてたんだよ、お前。」
「……。」
「…かわいかったなー、あんとき。」
「……。」
「…ま、3年も付き合ってたら変わるか。もう大人だしね。」

…わたし、大人になってるのかなあ。
今だってほんとは、会いたいよって泣きたいんだけどな。
言わないだけで、思ってるのに。

たまには手伝うとか言って、棚から食器取り出した玲於くん。
マグカップ手に取って、眺めてる。

「…そういやこれずっと使ってるよね。」
「…うん。かわいいから。」
「そろそろ変える?」
「いいよまだ綺麗だもん。」
「えー、そういやあれどうしたの。ヒビ入ったのにお気に入りだからって使ってたティーカップ。」
「…なにそれ、知らない。」
「は?」
「違うコとの思い出じゃないの。」
「…なに違うコって。俺お前以外のコと付き合ったことないんだけど。」
「…そんなバレバレな嘘つく?」
「ふは、バレバレってやめてよ。」
「もお、玲於くんあっち行ってて。お料理できない。」

言うと、はいはいって、さっきと同じようにソファー寝転んで、スマホゲームを始めた。

ようやく出来上がった 野菜炒めとお味噌汁
簡単な料理なのに、考え事してたら余計に時間かかっちゃった。
でも、ふたりで晩御飯食べたのなんて久しぶりで
やっぱズボラ飯だねって笑われたけど、それもいっか なんて思った。

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Tatsumi(プロフ) - 初めまして!ただいま、初恋一目惚れして、きなこさんの作品を読ませていただいています。こんなにしっくりくる玲於くんは初めてで、主人公ちゃんのキャラも好きで、今やきなこさんの作品や人間性に惚れ込んでいます。沢山の素敵な作品をありがとうございます! (2020年3月27日 10時) (レス) id: ec055f32e6 (このIDを非表示/違反報告)
ひかり(プロフ) - きなこさんのお話全部読んでます!!パスワードかかってるやつ昔読んだのですがまた読みたいので良ければパスワード教えて欲しいです! (2019年10月6日 12時) (レス) id: 5014defe8e (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - まってました!きなこさん!おかえりなさい!!!楽しみにしてます! (2019年10月2日 7時) (レス) id: b214cb1e69 (このIDを非表示/違反報告)
ChuRa(プロフ) - ハイスピード大歓迎です!きなこさんの書かれる佐野玲於くんが大好きです。更新楽しみにお待ちしております。 (2019年9月26日 12時) (レス) id: 6da9a38d0b (このIDを非表示/違反報告)
ゆりこ - 待ちきれないので毎日更新してください!!!! (2019年9月26日 1時) (レス) id: cb039e5484 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:きなこ | 作成日時:2019年9月13日 21時

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