結んで開いてその手をぎゅっと(碧海) ページ20
『碧海、聞いて聞いて』
｢ん？｣
『手相占いできるようになった！』
｢ … そうか、よかったな｣
月曜の1限目は碧海と同じ講義をとっている。広い大学の中で、互いに数少ない友人だから 自然と隣の席に座ることが多い。
昨日の夜、テレビをつけたらやっていた｢誰でもできる！手相占い！｣という特集になぜか興味をそそられた私。試しに碧海の手相を見ようと謎に意を決した私は今日も朝から碧海に絡む。合法的に(？)碧海に触れられるチャンスだ。完全に下心。
『君の運勢をみてあげるよ、さあ手を開きなさい』
｢月曜の朝からそのテンションで疲れん？大丈夫？｣
苦笑いをしつつも素直に手を開く碧海。
その手を覗き込んだ。しっかり見えるように少しだけ手を添える。
こんなにちゃんとこの人の手を見る機会なんてなかったけど、やっぱり角張っていて私の手より随分と大きい。
ちょっとだけ暖かい手のひらに、"碧海の手に触れている"とようやく自覚して 不覚にもドキッとしてしまった。
｢どうです？なにか分かります？｣
子供を相手にするような口調。余裕そうな碧海に対して、私の心臓はバクバクと脈打つ。自分から提案したくせに、今更ドギマギしている。
｢ … なあ、A、分かってる？｣
『ちょっとまってよ、今みてるから』
｢そうやなくて｣
『え、なに？』
｢一旦こっち見てみ｣
『ん？ えっ、あ』
｢な、俺ら今どんだけ近いか分かる？｣
顔をあげれば、目の前には綺麗な顔。あと数センチ、下手に動けば触れる距離。
『ご、ごめん！近すぎた、離れる』
咄嗟に距離を取ろうとした。
その瞬間、ぎゅっと手を握られる。
大きな手にすっぽりと収まった私の手。
どんどん速くなる心臓は、もう鳴り止むことを知らない。
｢誰にでもこんなに近いん？｣
『そんなこと、ないよ』
｢ならええけど｣
｢緊張してるん俺だけかと思ったけど、その顔見たらそうでもないっぽいな｣
『えっどういう』
｢あ、先生来たわ｣
そう言うと、私の手を包んでいた温かさは離れていってしまった。
もう、先生タイミング悪すぎるよ。
｢Aの手、案外ちっちゃくてかわええな｣
『 … そうでふか』
｢"でふか"って何？動揺してるん、ほんま可愛い｣
『からかうのやめてよ！バカ！』
碧海、あなたの手相には 恋愛運が超絶良いって出てたけど
その相手、私だったらどうですか？
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作者名：ヨカ | 作成日時：2021年8月22日 22時
