生きる恋を、大きくなる愛を【短編集】 (ページ21)

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恋は灯台下暗し(景瑚) ページ21

『また呼び出されたの？』
｢うん、名前知らないけど｣
『モテる男は大変だねえ』
｢超～大変、誰か代わってほしい｣

こんなことを言っても、それが許されてしまうからこの人は憎めない。

小さい頃は｢Aちゃん、Aちゃん｣って私の後ろをつきまとっていた泣き虫だった。

それが中学に入って、いつの間にか身長を越され、声も低くなり、段々と"男性"に成長していった景瑚。

誰もが羨むビジュアルを手に入れた景瑚は、高校に入ればそれはもう大変モテる。モテすぎて告白されることに飽きてきたらしい。どんだけ贅沢な悩みだよ。

二人でいることが当たり前になってしまった私達。入学初日の｢高校は別々に通う？｣という私の提案は、景瑚の｢やだ｣の一言でばっさり切られてしまった。

｢いい加減疲れちゃう｣
『相手は勇気出して告白してくれてるんだから景瑚も優しくしなよ』
｢めちゃくちゃ優しく断ってるよ！でもどんな断り方しても悲しそうな顔されるのはいつまでも慣れないんだよね｣

こういうところが景瑚の優しいところ。

人を傷つけることが嫌いだし、傷ついてる人を見ると放っておけない人。

だから、昔から景瑚が好き。景瑚を見てキャッキャと騒ぐ女子に心の中で｢私は昔から好きだもん！｣と意味のないマウントをとってしまう。当の本人は私の気持ちになんか気づかないけどね。

｢ずっと黙ってたんだけど、好きな子いるんだよね｣
『え、そうなの？』
｢その子は俺のこと呼び出す気配全然ないの。俺の気持ちにも気づいてくれないし｣
『へえ、そんな子いるんだね』
｢毎日一緒にいるのにだよ！？酷くない？｣

『だったら景瑚が告白すればよくない？』
｢ … あ、そっか｣

言うまで気づかなかったの？ていうかさりげなく失恋しかけてるよね、私。

｢じゃあ俺告白する｣
『ん、頑張れ』

｢A｣
『うん？』
｢好きだよ｣
『 … え？』

｢ずーっと好きだったんだけど、気づかなかった？｣
『へ、あ、いや』
｢Aは俺のことどう思ってる？｣

私の顔を覗き込む景瑚の綺麗な顔。急上昇する顔の熱を自覚した途端、｢顔真っ赤｣とニヤニヤする景瑚の顔をぐいっと遠ざけた。

｢ちょっと、いひゃい｣
『やめて、今顔見ないで』
｢ … 勘違いだったらごめんなんだけど、脈アリだったりする？｣

景瑚こそ私の気持ちに気づかなかったでしょ？
気づいてくれないなんて、そっちだけが悩んでたと思うなよバカ。