精神ズタボロなのだよ…… ページ9
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【視点→緑間】 5月12日 16:40
誰もいない保健室で2人きり。
聞こえてくるのは、部活の喧騒のみ。
今こそ、夏川に……
「お前は……」
「うん」
真太郎!男だろう!ここはハッキリ聞くときなのだよ!「好きなやつはいるのか」と!
「お前!好きなやつはいるのか!」
威圧的な上に、怒ったような口調で言ってしまったことにオレが後悔している一方で、夏川はニヤニヤしながらこちらを見ていた。
「えぇ〜好きなやつ?知りたい?知りたい?」
……なんだか態度が癪に障るのだよ。
だが、ここで素直にならないと……夏川のことだ。ある日突然「私、この人と結婚するからー」と呑気に言いかねない。
オレは、夏川が選ぶような男は認めない。夏川のことだ。どうせ、ろくでもない男を連れてくるだろう。
この前もそうだ。夏川はインチキ占い師に騙されて、変な本を買って……本当にアホなのだよ。
だから、夏川の隣にいるやつは……オレが選ぶ。
できることなら……オレが、隣に。
肺の中の酸素を一気に吐き出して、「夏川の好きなやつを、知りたいのだよ」と呟くと、夏川は満足そうな笑みを浮かべた。
「好きなのは……えっとね、さっちゃんと、かよちゃんと、はなちゃんと……」
「それはお前の友人だろう!……そういう意味の、好きなやつじゃない」
自分の頬が熱くなるのを感じながら喋ると、夏川はようやく納得した。
「私ね、隣の家のゴンちゃん(犬)に最近メロメロだよ!」
「……そうだな、お前はそういうやつだったな」
夏川に当分、春は来ない……か。
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作者名:早咲サクラ | 作成日時:2014年5月16日 17時