切望 ページ13
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【side→赤司】 5月12日 19:10
夏川A。
1年から3年まで、毎年同じクラスで……柄に合わないが、運命を感じていた
彼女は美しい。そして、気さくな性格もまた引きつけられる。
だから、不特定多数の男から告白をされているだろう……と思ったら、とある武勇伝?のせいで全く告白をされていないらしい。
そんな夏川さんに今日助けてもらったのは、本当に嬉しかった。
(僕の事を知らなかった事は想定外だったが)
夏川さんには、好きな男はいるのだろうか?
もし、オレが好きだと言ったら、夏川さんは付き合ってくれるのだろうか?
夏川さんの事が頭から離れない
はあ、と溜息をつくと、コンコンと控え目なノックが聞こえて、「失礼いたします」と、赤司家において最も長く仕えている使用人――東雲が僕の部屋に入ってきた。
「征十郎様、お加減は如何でしょうか?」
「あぁ……だいぶ良くなったよ」
「熱を測らせていただきますね……」
東雲はオレの額を触った。
東雲の手は、人間とは思えないほど冷え切っていた。
「微熱、ですね。まだ安静にしていてください」
「あぁ」
東雲に促されて、僕は深い眠りについた。
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「赤司君!」
誰もいない放課後の生徒会室で雑務をこなしていた僕のところへ、夏川さんがやって来た。
これは……夢か。
夏川さんは、恥じらいながら僕の目の前へとやって来て、小さな声で言った。
「私ね、赤司君の事が好きなの」
夢かと思った。勿論、夢だが。
それでも……嬉しい。
僕は立ち上がり、心臓の高鳴る音に心地よさを感じながら夏川に近づき、彼女を抱きしめた。
「……僕も夏川が大好きだ。でも、交際してほしいとは思わない」
「えっ……」
夏川が涙目になって、僕を見上げた。
今、彼女の感情を僕が操っていると思うと……気分がいい。
僕は、彼女の耳もとで、
「A、結婚しよう」
と囁く。途端に真っ赤になるA。
そして僕達はキスを……
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「出来なかった、か……キス」
窓から朝日が差し込んでいる……よく寝たな。
空っぽの心のまま、僕は今日も、今日をこなす。
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作者名:早咲サクラ | 作成日時:2014年5月16日 17時