武勇伝 ページ12
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【視点→黄瀬】 5月12日 17:25
いやぁ……助かった?
変な助けられ方したせいか、実感が湧かない。
取り敢えず、助けてくれた女の子にお礼を言わないと……あれ?この子……
「Aサンっスよね!」
「何故私の名前を…?」
Aサン、やっぱ噂通り可愛い。
こんな子があんな武勇伝を……アリエナイ。
「そりゃ、色々な意味で有名だからっスよ!」
「色々な意味?」
「ナニソレ?」と言いながら首をかしげる姿がまたイイ。
「そんな事をより、助けてくれてありがと!恩に着るっス!」
「どういたしまして?それより、サイン」
「さっき貰ってたじゃないっスか〜良かったっスね!サイン貰えて!」
パチンとウインクをしてあげると、Aサンは何とも言えない微妙な顔になった。
「えぇえ……?」
さっき『不良 一』から貰ったサインを、ひっくり返したり、夕日に透かしながら、Aサンは唸る。
そして、真顔で言った。
「いらない」
「ずいぶんと辛辣っスね。もしかしたら、不良サンが将来的にオレより有名になるって可能性もあると思うっスよ?」
オニオンスープだと思って飲んだら、本当は鰻だったっていう確率くらいね?(意訳:絶対に有り得ない)
オレの話を聞いたAサンは目をキラキラさせた。
少〜しだけ罪悪感を感じたけど、個人でサインを楽しむ分なら……
「『人気モデル黄瀬涼太からの折り紙つき!将来的に確実に著名人になる不良 一のサイン』としてネットオークションに出そ」
「うわぁぁあ!ダメっスよ!」
両手をブンブンと振ってダメっス!ダメっス!を連呼したら、Aサンはニヤリと笑った。
「18歳未満は駄目でしょ?知ってる知ってる〜」
「それもモチロンダメっスけど、オレの名前を使うのはもっとダメ!」
オレが真剣に訴えると、「冗談だよ」と微笑んで、オレの頭をポンポンと撫でた。
ちっちゃいくせに、頑張って背伸びしてオレの頭を撫でるAサン。
そんな彼女を見て、柄にもなく口元が緩むのが恥ずかしくて、思わず俯く。
って、こんな所で照れて終わったら、大人気シャララ系モデル黄瀬涼太の名が廃る!と思い、取り敢えず思い浮かんだ言葉を紡ぎ出した
「でも、オレ……嬉しかったっスよ?人気モデルって言ってくれ……あれ!?」
が、気がついたら、Aサンはもういなかった。
まるで大型台風のような彼女と再会するのは――もう少し後の話。
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作者名:早咲サクラ | 作成日時:2014年5月16日 17時